日本シリーズ惨敗「ソフトバンク」に専門家は「小久保監督の慢心」を指摘…名将・野村克也氏が「短期決戦では常に自分たちが“格下”」と考えていた理由

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野村監督の至言

 野球評論家の広澤克実氏は「レギュラーシーズンと日本シリーズは別物」と指摘する。広澤氏はヤクルト、巨人、阪神の3球団でプレー。ヤクルト時代には1992年と93年に西武と日本シリーズを戦った。共に4勝3敗までもつれ込み、現在でも「史上最高の日本シリーズ」との呼び声が高い。92年は敗れたが、93年は日本一に輝いた。

 阪神時代は2003年にダイエー(現:ソフトバンク)と日本シリーズを戦った。こちらも第7戦までもつれ込み、結果は4勝3敗でダイエーが勝利した。

 広澤氏は自身が日本シリーズに出場しただけでなく、ヤクルト時代の監督が“名将”と呼ばれた野村克也氏であり、その発言を直に聞いていた。こうした経験から「日本シリーズは普段の試合とは異なり、チームの戦力がそのまま勝敗に反映されるとは限りません」と指摘する。

「野村さんは『短期決戦の勝敗はチームの打力、守備力、走力といった総合的な戦力ではなく、運や流れで決まることのほうが多い』と何度も口にしていました。大舞台で相手チームがミスをしてくれれば、一気に流れがこちらに傾きます。しかしながら、相手もそう簡単にはミスしません。流れを自分たちで引き寄せる必要がありますが、そのためにはどうしたらいいのか。野村さんは『相手打者にボール球を振らせること』と断言していました。確かに今回の日本シリーズでも、DeNAの投手陣は要所要所でソフトバンクの打者にボール球で振らせたり、凡打に打ち取ったりしていました。野村さんの指摘通り、あれで流れがDeNAに傾いたのです」

野村監督と小久保監督の差

 広澤氏にとって強く印象に残っているのは、野村氏の日本シリーズに挑む際の“姿勢”だという。広澤氏は95年に巨人に移籍したが、その年に行われたヤクルト対オリックス戦も含め、「野村さんは対西武でも対オリックスでも、自分たちヤクルトが“格下”だと認識していたはずです」と指摘する。

「文字通りの黄金時代だった西武は当然だとして、オリックスとの日本シリーズでも『イチローを何とかしないと負ける。イチローは一人でも流れを作ることができる選手だ』とずっと心配していました。本気で格下だと思っていますから、勝つためには手段を選びません。例えば野村さんの場合、試合前から日本シリーズは始まっています。記者に怪情報を披露したり、煙幕を張ったりして、全力で情報戦を仕掛けるわけです。格上のチームを率いる監督であれば問題視されるかもしれませんが、野村さんの判断では『自分たちは格下だ』ですから許されるということになります」

 それではソフトバンクの小久保監督は、果たして自分たちが「格下」だと思っていただろうか?

「小久保監督は自分たちが戦力で上回っており、格下のDeNAに対しては横綱相撲で挑むべきと考えていたのではないでしょうか。まず攻撃の回では積極的に仕掛けなかったという印象が残りました。例えば足の速い周東佑京選手でかき回し、DeNAの投手陣にプレッシャーをかけるのかと予想していましたが、そういう場面は少なかった。投手の継投策でも後半はことごとく裏目に出ましたが、『いいピッチャーを惜しげもなく投入する』という必死の姿勢ではなかった気がします。つまり率直に言って、小久保監督は相手がDeNAということで、慢心や油断があったのだと思います」(同・広澤氏)

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