大敗「公明党」が直面する“危機”の正体…学会員の高齢化だけではない「庶民の党」を揺るがす深刻な課題とは

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議員辞職した「プリンス」

 熱っぽい宗教行事に青春の汗を流した同志たちと精神的に結びつく党のリーダーの系譜は、太田氏と、井上氏が21年に引退したところで概ね途絶えたように見える。

 若手では、創価大学出身で、前出の佐藤氏が後支えした遠山清彦氏(元財務副大臣)が「プリンス」と有望視されたが、コロナ禍下の銀座高級クラブ通いが発覚して21年に議員辞職している(その後、副大臣在任中の貸金業法違反で有罪が確定)。

 後者のエリートのパターンは、現在の公明党初代代表の神崎武法氏(81)が東大法学部卒で検察官を経て議員に転じたほか、前代表の山口那津男氏(72)が東大法・弁護士出身。その次の世代では前述の石井氏のほか、石井氏と初当選同期(93年)の赤羽一嘉氏(元国交相)が慶應大学から三井物産、斉藤鉄夫氏(国交相)が東工大大学院から清水建設というキャリアを経て議員になった。

 さらに若手では、党憲法調査会事務局長の國重徹氏(49)は元弁護士、前厚労副大臣の伊佐進一氏(49)は文科省の官僚からの転身組という俊英だが、2人とも今回の衆院選で黒星を喫している。

 このパターンでは、信仰を持つ家庭に育ちつつも、指導部から白羽の矢を立てられるまで、生々しい信仰体験や泥臭い活動を通じて学会の現場の人々との間で仲間意識を醸成する機会に恵まれてはいないことが多い。しかも、今後登場するリーダーの多くが、この系譜を継いでいくと考えることもできる。

山口前代表の存在感

 創価学会と公明党は、戦後都市に流入した貧しい世帯の孤独や不安を吸収するかたちで活力を膨らませたが、信者のボリュームゾーンは80代から90代の年齢に差し掛かり、鬼籍に入りつつある。これに対して、神輿に乗る側の党幹部は信仰との関係が薄いエリートばかりという奇妙な関係は今後も続くのである。しかも、信仰上のカリスマである池田大作名誉会長の死去で活動の原動力となる“熱源”を失っている中で、創価学会・公明党指導部にとって人材の払底は深刻な危機である。

 党指導部がこうした現場との「スキマ風」をかわすことができていたのは、15年にわたって代表を務めた山口氏の存在感が大きい。その影響力は未だ衰えず、今回の衆院選でも、山口氏が応援演説に登場すると「なっちゃーん」と声がかかった。宗教活動の体験を共有していなくても人気なのは「弁護士試験に2回落ちて、議員も2回落ちた、とさらりと口にする飾らない人柄」(70代女性学会員)によるところが大きい。石井氏の落選後、再登板説が浮上するのも、代え難いそのキャラクターゆえだろう。

 11月9日に行われる臨時党大会では、斉藤氏が選任される公算と報じられている。その次に控えるのは、米ケロッグ経営大学院修了後、ゴールドマンサックス証券勤務を経て議員となった岡本三成政調会長だ。

 エリート臭が匂う党幹部のふるまいが再び現場に冷や水を浴びせるようなことが続けば、党勢の減退は、さらに加速するのではないか。

広野真嗣 ひろの・しんじ
1975年、東京都生まれ。慶応義塾大法学部卒。神戸新聞記者を経て、猪瀬直樹事務所のスタッフとなり、2015年10月よりフリーに。17年に『消された信仰』(小学館)で第24回小学館ノンフィクション大賞受賞。

デイリー新潮編集部

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