日本ハムが覇権を取り戻す日も近い? 関係者は“札幌ドーム脱出”で「ようやく現場の声に応える補強ができるように…」
今年のプロ野球で最も躍進を遂げたチームと言えば、日本ハムになるだろう。2016年には大谷翔平(現・ドジャース)の大活躍もあって見事日本一に輝いたが、その後の7年間はBクラス6回、最下位2回と低迷。しかし、今季は開幕から順調に勝ち星を積み重ね、優勝したソフトバンクには大差をつけられたものの、3位のロッテとは5ゲーム差をつけての2位と、6年ぶりとなるAクラス入りを果たした。【西尾典文/野球ライター】
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新庄剛志監督の手腕
チームの転機となったのは、やはり新庄剛志監督の就任である。2022年の就任以来2年連続で最下位に沈んでおり、今年が勝負のシーズンだったが見事に結果を残して見せた。10月29日には来シーズンも続けて指揮を執ることが発表された。
では、チームがここまで躍進した理由はどこにあるのだろうか。
まず大きかったのが“血の入れ替え”だ。新庄監督が就任してから成立した交換トレードは7件を数える。もちろん獲得した選手の全員が大成功しているわけではないが、斎藤友貴哉と山本拓実がリリーフとして貴重な戦力となり、郡司裕也がチーム2位となる113安打を放つなど大きな成長を見せている。
これに加えて、フリー・エージェント(FA)の人的補償で獲得した田中正義は抑えに定着。現役ドラフトで加入した水谷瞬も、セ・パ交流戦でMVPを獲得するなど、ブレイクを果たした。
これまであまり積極的ではなかったFA市場にも積極的に参戦。一昨年のオフには伏見寅威、昨年オフには山崎福也を獲得して、ともに期待通りの働きを見せている。外国人選手も中日で成績を残していたマルティネス、メジャーで実績があるレイエスらを獲得し、打線の厚みが増した。
新球場で大幅な増益を達成
そして、このような補強を可能にできたのは、昨年開場した新球場「エスコンフィールド北海道」の存在である。球団関係者はこのように話す。
「以前は選手の総年俸の上限が厳しく設定されており、年俸が高くなってきた選手は、メジャーや他球団に移籍するという“暗黙の了解”のようなものがありました。当然、高額年俸の選手を補強するこがも難しく、いかに若手を早く戦力にするかという点に注力していたと思います。ただ、FAの年数が短くなり、ポスティングでのメジャー移籍があって、若手を戦力化するサイクルが追い付かず、それが低迷に繋がった要因の一つだったと思います。(高額な使用料を払う必要があった札幌ドームから)ようやく自前の新球場に移転し、球団の財政面が改善したことで、現場の要望に応えられるだけの補強ができたことは大きいと思いますね」
球団の発表によると、昨年の営業利益は目標を大きく上回る約36億円とのことで、コロナ禍前の2019年の9億5000万円と比べると大幅な増益となっている。開場2年目の今年も業績は順調に推移しているという。北海道の中心である札幌市から離れることに対する疑問の声があったが、思い切った本拠地移転がチーム成績にも大きなプラスをもたらしていると言えそうだ。
飛躍の要因は、補強だけではない。現有戦力の底上げと新戦力の抜擢も見逃せない。2020年のドラフト1位、伊藤大海が今季、最多勝のタイトルを獲得するなどエースへと成長。金村尚真をはじめ、北山亘基や福島蓮、柳川大晟らもここ数年のドラフトで入団した選手である。
野手では、松本剛が新庄監督就任1年目にいきなり首位打者を獲得してブレイクし、万波中正や清宮幸太郎、田宮裕涼、水野達稀らも主力へと成長している。新庄監督が就任する前年の2021年と比べると投手、野手とも大きくメンバーが入れ替わっており、ここまで若手が台頭してきた球団は他には見当たらない。
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