「トランプかハリスか」で離婚や業績急落も 異常な「分断大国」アメリカのリアル
1年で2200万丁の銃を販売
共和党のドナルド・トランプ前大統領(78)と、民主党のカマラ・ハリス副大統領(60)が、接戦を繰り広げた米国の大統領選。投開票の結果が出そろったとて、今回もノーサイドとはいかない様子だ。国民の間に生じた埋めがたい亀裂、米国で起きている異常事態とは。
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これまでトランプ氏に対する2度の暗殺未遂が起きていることからも分かるように、米国内での「共和党支持者VS民主党支持者」の分断は深刻なレベルに達している。分断からくる物騒な世相は、もはや日本に住むわれわれが想像する以上に進行してしまっているという。
内戦研究の権威で、カリフォルニア大学サンディエゴ校政治学教授を務めるバーバラ・F・ウォルター氏の著作『アメリカは内戦に向かうのか』によれば、
〈2020年、アメリカの銃販売数は過去最高を記録した。1月から10月までに1700万丁が販売された。主たる購入者は保守派であり、民主党が選挙で得票を伸ばすほどに銃購入の傾向は高まった〉
最終的には2200万丁が販売され、この年を境に販売数は落ち着いたとはいえ、いまだに米国内では過去にないほど膨大な数の銃が流通していることになる。
近未来における米国の内戦を描いた映画「シビル・ウォー」がある種のリアリティーを持って受け止められるほどの緊張状態が続いているのだ。
「離婚を選択する人まで」
アメリカ研究が専門で慶應義塾大学教授の渡辺靖氏が解説する。
「アメリカでは上下両院も含めれば実質的に2年に1回選挙が行われ、その度に保守とリベラルの陣営に分かれて中傷合戦を繰り広げています。90年代から30年くらい同じことを繰り返しているわけで、両派の支持者の間に生じる拒否感は生理的なところまできています。ある結婚コンサルタントの指摘では、離婚理由の一つとして近年は支持政党の違いがあるとされています。これまでは支持政党が違っても同じ家族としてやっていけたのに、やっぱり基本的な現状認識が違うとなって、離婚を選択する人まで出てきているのです」
保守派の理念を共有する店を集めたECモールが躍進
投票日の前後は外出を避ける人々が多くなるほどだというが、分断は個人の消費行動にも及んでいる。
ネット通販が盛んな米国では、「中絶反対」など保守派の理念を共有する店を集めたECモール「パブリックスクエア」が急成長を遂げている。昨年7月には、立ち上げから2年でニューヨーク証券取引所へ上場を果たしたのだ。
上智大学教授の前嶋和弘氏が言うには、
「トランプの支援者に『マイピロー』という枕の製造販売業者がいて、トランプの支持者がみんな買うわけです。ファストフードなら、南部を中心に展開するフライドチキンのチェーン『チックフィレ』は、社長が同性婚反対を明言してキリスト教福音派の御用達となっている。逆にリベラル派が使うカフェ・ベーカリーチェーン『パネラブレッド』などもあって、街中でも保守とリベラルのすみ分けが進んでいます」
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