「船井電機」破産で気になる“秘蔵ビデオ”の運命は? 担当者に聞いてみた

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 10月24日に倒産した船井電機の負債総額は470億円。驚くのは民事再生法や会社更生法の適用申請ではなく、会社そのものが消えてしまう「破産」を選んだことだ。

“迷走”の原点は

 同社の迷走は、2017年に創業者の船井哲良(てつろう)氏が亡くなったことから始まる。

「北海道で医師をしている長男の持ち株を秀和システムHD(以下秀和)という出版社が買収。社長に就任した秀和の上田智一氏は新たに持株会社の船井電機・ホールディングスをつくり、“新事業”として、なぜか脱毛サロンのミュゼプラチナムを買収するのです。原資は船井電機の本社不動産などを担保にした借金でした。さらに今年5月、広告会社『サイバー・バズ』が広告料の未払いを理由に船井電機の株を仮差し押さえしたことが発覚。船井電機は脱毛のCM料金まで連帯保証させられていたわけで、分かっているだけでも50億円が流出していました」(社会部デスク)

 船井電機HDの事業報告書を見ると、3年間で純資産が300億円も減少しており急速に財務が悪化していることが分かる。それだけではない。5月には家電とは畑違いの人物らが取締役に就任し、大阪の「自由同和会」幹部で逮捕歴がある人物もいた。破産を選んだのはこれ以上の被害を防ぐためだったとみられている(仮差し押さえの前にミュゼ社は売却され、上田氏は9月に退任。会長には原田義昭元環境相が就任)。

ビデオデッキはどうなる?

 かつては優良企業として絶賛された時期もあった。フリージャーナリストの小宮和行氏が言う。

「船井哲良氏は、松下幸之助に憧れてミシン卸問屋から家電に乗り出した人。松下電産(現パナソニック)などの受託生産で事業を拡大し、格安液晶テレビの売り上げでは北米でトップになったこともありました。また、松下とほぼ同時に、世界初のホームベーカリー(自動製パン器)を発売して一大ブームを巻き起こしたこともあります」

 ソニーと松下がビデオの規格で争った「ビデオ戦争」では松下側について、ソニー敗退に一役買った。それもあってか、家電メーカーとしては最後(16年)までVHSビデオデッキを生産していた。だから「FUNAI」のデッキを今も愛用している人もいるはず。だが、これからは修理も不可能になるのだろうか。子会社の船井サービスに聞くと、

「デッキの型番にもよりますが、これからも有償でお引き受けしていきます」

「秘蔵ビデオ」を持っている世代にとっては、せめてもの救いの知らせである。

週刊新潮 2024年11月7日号掲載

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