“由伸ロス”で厳しすぎる「沢村賞」に改革機運も…“大投手への敬意”より厄介な“抵抗勢力”とは?

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絶対的エースの不在

 日本のプロ野球で先発投手の最高の栄誉である「沢村賞」が5年ぶりに「該当者なし」となった。プロ野球草創期の伝説の名投手、沢村栄治の名を冠した1947年創設の表彰で、米大リーグのサイ・ヤング賞(最優秀投手賞)よりも歴史が古い。今回も、七つの基準〈(1)15勝以上(2)防御率2.50以下(3)150奪三振以上(4)10完投以上(5)200投球回数以上(6)25試合登板以上(7)勝率6割以上〉を目安に、選考委員会で5人の委員により議論された。だが、記者会見の開始が予定時間より大幅に遅れるなど紛糾した末、スポーツメディアによれば、元巨人投手の堀内恒夫委員長(76)は「“帯に短し、たすきに長し”“こっちが立てば向こうが立たない”という非常に難しい選考だった。いろいろな意見が出たが、一本化することができなかった」と語り、選出を断念した。

 沢村賞は昨季まで山本由伸投手(当時オリックス、現ドジャース)の独壇場だった。全項目を満たしたことはなかったとはいえ、「絶対的エース」にふさわしい内容で、ほぼ全会一致による選出を続けた。

 山本のメジャー移籍で、本命不在となった今年は菅野智之投手(巨人)らが候補に挙がり、最終的に戸郷翔征(巨人)と有原航平(ソフトバンク)の2投手に絞られた。戸郷は防御率(1.95)、登板数(26)、勝率(6割)、奪三振(156)の四つの基準を満たし、有原は防御率(2.36)、登板数(26)、勝率(6割6分7厘)の三つを満たしていた。一方で、2人とも足りなかった基準を凌駕して選出されるほどの絶対的な投球とは言い難かった。「最優秀投手賞ではなく、沢村さんの名前、権威がある賞。無理して選ぶ必要はない」(堀内委員長)との結論も一定の説得力はあった。

 球界は先発が一人で投げ切ることが当たり前だった時代から先発、中継ぎ、抑えの「分業制」に移行して久しい。特に近年では完投数のハードルが高くなっている。2桁完投は2020年の大野雄大投手(中日)以来、出現していない。全項目の基準到達も2018年の菅野智之投手(巨人)が最後だ。

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