ソフトバンクの「ドラ1」神戸弘陵・村上泰斗は「山本由伸2世だ!」とスカウト陣が断言する理由 ストレートの回転数はメジャーのトップ級を上回る

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 春夏の甲子園に出場できず、全国大会で全く実績がない神戸広陵の右腕、村上泰斗は、どうしてソフトバンクからドラフト1位指名を受けたのか。投手歴2年半の村上が駆け上がった“シンデレラ・ストーリー”に迫った――。【喜瀬雅則/スポーツライター】

(前後編の後編)

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12球団で唯一、測定機器「ラプソード」を持ち込んだソフトバンク

 ソフトバンクの2024年ドラフトは、侍ジャパン入りも果たした明大の遊撃手・宗山塁、福岡大大濠高の二刀流・柴田獅子を1位指名しながら、いずれも他球団との競合で抽選を外し、交渉権は獲得できなかった。

 その“外れ外れ”ながら、迷いなく1位指名した逸材が神戸弘陵・村上泰斗だった。

「一番、学校に視察に来られたのが、ソフトバンクさんでした」

 神戸弘陵・岡本監督の証言こそが、球団の熱意を物語っている。

 関西地区担当スカウトの稲嶺誉は、昨年のドラフト1位左腕・前田悠伍(大阪桐蔭高)、一昨年は育成ドラフト7位で指名した京大医学部出身という、異色のキャリアを持つ右腕・水口創太を担当するなど、素材を見抜く目と精力的なスカウティングには定評がある。

 その稲嶺スカウトが築いた神戸弘陵との太いパイプを生かし、スカウト陣が一同に集結する夏の甲子園期間中を活用し、甲子園に出場できなかった村上のブルペン投球が視察できるよう依頼したという。

 8月のある日、永井智浩・編成育成本部長兼スカウト部部長、福山龍太郎アマスカウトチーフをはじめ、スカウトや球団スタッフら総勢8人で訪問。球のスピン量や回転軸など球質をチェックできる測定機器「ラプソード」をわざわざ持参してきたのは、12球団すべてが同校へ練習視察に来た中でも「ソフトバンクさんだけでした」と岡本監督はいう。

「モイネロやないか!」「これはエグいぞ」

 その“夏のデモンストレーション”の場で、村上が仰天の数字を連発するのだ。

 ソフトバンクのラプソードでは、球速は144キロが最高だったという。ところが、驚くべきは、そのストレートの「スピン量」だった。1分間の換算で2500回転を超え、さらにスライダーだと同2600回転台をマークしたのだ。

 MLBで、ストレートの平均回転数は2200~2300前後、村上が投じたストレートはつまり、メジャーのトップ級も上回るものなのだ。ストレートとスライダーともに、いずれの回転数も、ソフトバンクの投手陣では、今季のパ・リーグ最優秀防御率のタイトルを獲得したキューバ出身の左腕、リバン・モイネロに匹敵する数字だったという。

 1球ごとに画面に出て来るデータに、スカウト陣は興奮を隠せなかったという。

「モイネロやないか!」
「これはエグいぞ」
「久々にすごいものを見たわ」

 ストレートの回転数の高さは、球の「伸び」がある証拠とも言われる。村上の抜群の球質が、その数字で明確に証明されたのだ。

 稲嶺スカウトが、タブレットに保存されているデータを見ながら解説してくれた。

「144キロなのに、この回転数でしたからね。鍛えて、体がもっとできてくれば、球速はさらに上がってくるでしょうからね。そうなったらもう、とんでもないことになりますよ」。

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