悲しい理由で“行為はなし”のバツイチ夫婦 50歳夫が沼ってしまった「思わぬ相手からの誘い」

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以降、元妻と連絡をとるようになり…

 娘が旅立ってからも、志織さんはときどき連絡してきた。

「ちょっとつきあってほしいところがあるんだけどと彼女が言ってきたのは、昨年暮れでした。クリスマスパーティがあるんだけど行かないかって。パーティと聞くとトラウマが疼くよと言ったら、『そうなの。そっちのパーティなんだけど、カップルじゃないと入れてくれないところがあるのよ。あなたは何もしなくていいから』って。おまえはアホかと思わず言いましたよ。何が原因で離婚になったのかわかってるのか、と。すると志織はヘラヘラ笑いながら『わかってるって。でもさ、もういいじゃない。私たち他人なんだし』って。なんだか僕も怒る気にもなれなかった。しかも夕美とは相変わらずのプラトニック。いくら僕が植物系だとはいえ、たまには荒ぶりたいときもあるわけで……」

 元妻の巧みな会話に乗せられたのと、永太さん自身、たまにはエロティックな気分に浸りたい欲求があり、「見るだけ」という約束でパーティに行った。そして大いなるカルチャーショックを受けてしまったのだという。

「来ている人たちが楽しそうだったし、秘密を共有している親しさに満ちていたんです。志織もとっても純粋に楽しんでいた。数時間で帰りましたが、『どうだった?』と言われて、楽しそうで羨ましかったと素直に言ってしまいました。やっぱりあなたは純な人ねと、志織は結婚したときのような魅力的な笑みを浮かべた。あのころも連れてくれば受け入れてくれたのかなと志織はのんきにつぶやいていました。いや、たぶん無理、許容はできなかった。今、この年だからこそこういうのもわかるなと思ってると言ったら、じゃあ、今度は一緒に参加しようと……」

不倫でもなく、スポーツでもなく…

 今年の初めから、彼は4回ほど志織さんとともに参加している。志織さんの夫はもちろん、このことは知らないのだという。

「彼から見ると、元夫と妻が自分を騙していると思うでしょうね。それを考えると胸が痛い。僕だって、トラウマを抱えている夕美を傷つけるようなことをしている。今度こそ、もう行かないと言うつもりなのに、志織から連絡が来ると尻尾を振って行ってしまう自分が、今はただひたすら恨めしいです。相手が志織だから一緒に行きたい思うんでしょうね。実は……志織とも関係をもってしまっています。いや、それももちろん“遊び”の一環であって志織に恋しているわけじゃないんですが」

 人間にはさまざまな快楽があるが、こうした趣味は理屈ではなく、本能的もしくは心の奥深くで共感できるかどうか、はまるかどうかが決まるのかもしれない。永太さんにも、その芽があったということだろう。

「志織がかつて言ったように、不倫みたいなドロドロ感はないんです。かといってスポーツみたいなものでもない。かりそめの、ほんの一時的な愛というか。でも刹那だからこその強烈な快楽があるんです」

 はまってはいけないと考えながらも、はまってしまった永太さん。さらにそこには志織さんへの思いもからんでいるはずだ。当分、この深い沼から抜けられそうにない。

 ***

 思わぬ世界に足を踏み入れてしまった永太さん……。もしかすると、病床の母の「つぶやき」に背中を押され、悔いのない性生活を送りたくなったのかもしれない。【前編】で詳しく紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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