小学生が延々と見続ける「ショート動画」のリスク…アメリカでは“大規模訴訟”が起きても「日本の規制は抜け穴だらけ」なのはナゼか

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 YouTubeやインスタグラムなど、「ショート動画」が大流行している。「うちの子も長時間見続けていて……」とお悩みの方も多かろう。そんな中、10代から最も熱い支持を集める「TikTok」に対して、大規模な訴訟が米国で起こされた。「若者の精神衛生を害している」と指摘されるが、実際にどのような問題が起こっているのか。そして、規制が進まず、“抜け穴だらけ”という日本の実態とは――。

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 今月8日、アメリカの13州と首都ワシントンの司法長官が、中国発の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の運営会社を提訴した。これまで度々話題になっていた「安全保障上の理由」ではない。アプリを意図的に中毒的な設計にして、10代の若者の精神衛生を害しているとして、その問題を指摘したのである。

「TikTokに代表される15~60秒程度の『ショート動画』は、若者に対する多くの悪影響が世界的に問題視されています」

 そう指摘するのは、ITジャーナリストで、成蹊大学客員教授を務める高橋暁子氏。

「AIを活用したレコメンド力が優れているため、個々人の好みに応じて次から次へと“見たくなる動画”が流れてくる。その波に身を任せている間、“幸せホルモン”とも呼ばれるドーパミンが分泌され続け、中毒症状に陥ってしまう若者は後を絶ちません。無意識にアプリを開き、いつの間にか1、2時間も経過してしまっているというケースが多々あるのです」

 こうして生活がショート動画に支配されることで、子どもが被る害は数知れない。

「発達途中の脳に与える影響は深刻で、集中力に欠け、ごく短時間で消化できるコンテンツしか受け入れられなくなる子どもが増加しています。また、動画上で美しく、細く加工されたインフルエンサーを見て、『それに比べて自分の容姿は……』と自己肯定感が失われてしまい、摂食障害や自殺念慮に繋がってしまっている事例もあります。その他、無数のデマ情報を信じ切ってしまったり、医療的に問題があるダイエット法が流行ってしまったり、無謀な行動をして注目を集める“チャレンジ動画”のマネをして危険な目に遭ったり……。こうした問題に対して、世界的にも看過できないという見方が強まってくる中で、米国でそのような訴訟が起こったのでしょう」

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