なぜ偏差値の高い学校では「チームスポーツ」が盛んなのか “体育座りができない”“上手に転べない”…運動能力の低下がもたらす子どもたちの危機【石井光太×為末大】

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文章力が競技力に影響を与える

為末 私が関わっているスタートアップ企業に、選手たちの日記をデジタルでつけて、コーチがフィードバックするという事業に取り組んでいる会社があります。そこでわかってきたのは長い文章を書けることは競技力向上に影響がある、ということ。今日何ができて、何ができなかったのかを詳細に書ければ書けるほど、次に取り組むことがより具体的になっていく。実は学力との相関もあるんじゃないかと仮説を立てているんですが、自分がやっていることが細分化されて具体的に掴めるかは、言葉力が大きい気がしますよね。

石井 初めのステップも重要ですよね。小さいころから自由に遊ばせることで大きく違ってくるんじゃないですかね。親が監視して一から十まで指導するのではなく、子供たちが好きなように体を動かして、「あー、今日も楽しかった」という体験を重ねていく。それが、小学校以降はスポーツになっていくと思います。

 それ以前のところで、そういう体験をきちんとしておかないとその先が広がらないので。本の取材の時に思ったのが、今の若い保育園の先生や学校の先生は、そもそもそういう遊びをしたことがない人がすごく多いんです。泥遊びをしたことがなければ、泥遊びさせることもできないですよね。

為末 私の立場から言えば、子どもがもっと体動かして、自然に触れてという機会を作ってあげることですね。

後編「『昔ながらのコーチは立場がない状況に』…スマホの普及がアスリート育成を変え、『監督がAIに置き換わる』可能性も【石井光太×為末大】」では二人が質問に答える形で「教育」「スポーツ」の未来を語る。

石井光太
1977年、東京都生まれ。海外の最深部に分け入り、その体験を元に『物乞う仏陀』を上梓。斬新な視点と精密な取材、そして読み応えのある筆致でたちまち人気ノンフィクション作家に。近年はノンフィクションだけでなく、小説、児童書、写真集、漫画原作、シナリオなども発表している。主な作品に『絶対貧困』『遺体』『43回の殺意』『「鬼畜」の家』『近親殺人』『こどもホスピスの奇跡』(いずれも新潮社)『本当の貧困の話をしよう』『ルポ 誰が国語力を殺すのか』(ともに文藝春秋)『教育虐待一子供を壊す「教育熱心」な親たち』(ハヤカワ新書)など。最新刊は『ルポ スマホ育児が子どもを壊す』(新潮社)。

為末大(ためすえ だい)
元陸上選手/Deportare Partners(デポルターレ・パートナーズ)代表
1978年広島県生まれ。スプリント種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2024年10月現在)。現在はスポーツ事業を行うほか、アスリートとしての学びをまとめた近著『熟達論:人はいつまでも学び、成長できる』を通じて、人間の熟達について探求する。その他、主な著作は『Winning Alone』『諦める力』など。

デイリー新潮編集部

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