富士山「目隠しコンビニ」現在は幕なしに 外国人客は絶えず…日本が秘める“卵サンド”的ポテンシャル

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観光ニーズに応えるラインナップ

 店内で買い物をしている訪日観光客のカゴを覗いてみると、ホテルに帰ってから食べると思われるおつまみ、お土産用らしきカップ麺やお菓子などが一杯に詰まっていた。客単価は、通常の2倍以上はゆうにありそうだ。サンドウィッチやスイーツ売り場でも楽しそうに商品を物色している姿があり、日本のコンビニのポテンシャルの高さを実感した瞬間だった。

 店側も、そのニーズに応えるべく、商品ラインナップが考えられていた。富士山グッズやお土産用のお菓子を、三つの棚にわたって大々的に展開。外国人観光客の必需品である水のペットボトルは、常温の箱積みで大量に陳列されていた。

 ローソン以外の河口湖周辺のコンビニを見てみても、ユニークな商品展開が光る。ファミマでは、通常の店では取り扱いのない外国のタバコや紙巻タバコキットなどが、ゴンドラ棚1本を使って売っていた。店員にヒアリングすると、やはり外国人観光客が買っていくとのこと。

 先のローソンの駐車場では、アジア系カップルが富士山とローソンを背にウェディングフォトを撮っていたし、近隣のほうとうの有名店「小作」では、多くの外国人観光客がほうとうの鍋をつついていた。ほうとうを食べたことのない若い日本人も少なくないであろうことを思うと、インバウンド対応の奥深さを感じさせる光景だ。日本には、まだまだ我々が気づいていないニーズがあることが予想される。

日本のポテンシャルはまだまだ

 河口湖周辺の活性化を目の当たりにすると、インバウンドが地方へさらに広がっていくことは止められない流れであると感じた。

 実際、141ヵ国に約8,900軒を展開する世界最大のホテルチェーン「マリオットインターナショナル」は、数年前から日本の地方観光に目をつけている。すでに道の駅で29以上の宿泊施設を運営しており、来年までには26都道府県・3,000室を展開する計画だ。

 日本の地方のビジネスチャンスを外国資本に取られてしまっているのは惜しいが、まだまだ参入する余地は残っているはずだ。国内や地方の企業は、地元力を結集して頑張ってほしい。

 今年から来年にかけては、円安傾向が継続されるだろうし、長いスパンで見ても、テクノロジーの発展が、地方への訪日外国人数を押し上げることだろう。自動運転が進化すれば、訪日客が車で日本全国を移動して、長期バカンスを楽しむことが予想できる。日本全国、津々浦々で外国人観光客を見かけるのが当たり前になりそうだ。

 これまで最大の訪日外国人だった中国人観光客は、ビザが免除されていない事もあり、 今年9月度で81万9,054人と、コロナ前の約8割にとどまっている。まだまだ伸び代があると考える。

 一方で、オーバーツーリズムの問題など解決すべき事も多い。富士山コンビニの件でも、迷惑を被っている地元民への配慮は求められるし、ローソンも5月と6月に「現状について」と題するリリースで、上記店舗の問題への対応を表明してもいる。

 同時に、少子高齢化で人口減が避けられない日本においては、インバウンドが大きな経済効果をもたらす“成長ドライバー”になる事は間違いない。今後、行政と民間が連動して創意工夫を重ねることで、年間7,000万人の訪日客を狙ってほしい。多様な食、安全で便利な治安と交通事情、城や寺院などの独自の観光施設、アニメなどの文化――。フランスの1億人、スペインの8,500万人に次ぐ、世界第3位に入る位のポテンシャルを、日本は秘めているはずだ。

渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
消費経済アナリスト、流通アナリスト、コンビニジャーナリスト。1967年静岡県浜松市生まれ。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は商品開発・営業・マーケティング・顧問・コンサル業務などの活動の傍ら、全国で講演活動を行っている(依頼はやらまいかマーケティングまで)。フジテレビ「FNN Live News α」レギュラーコメンテーター、TOKYO FM「馬渕・渡辺の#ビジトピ」パーソナリティ。近著『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』(フォレスト出版)。

デイリー新潮編集部

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