大阪万博が盛り上がらなくても9年前は…ミラノ万博の「日本館」が“行列9時間の超人気パビリオン”になった納得の理由
3年間議論を重ねた展示内容
ちなみに、約140カ国が参加する110ヘクタールの会場で、人気のパビリオンは日本に加え、主催国イタリア、ドイツ、カザフスタン(2017年に会期3カ月の認定万博を開催)、UAE(20年の開催国)だが、2番人気のイタリア館で待ち時間は最長6時間程度、ドイツ官は4時間程度だから、日本の人気は圧倒的というほかない。
それにしても、なにを目的にこれほど多くの来場者が集まるのだろうか。ミラノ万博のテーマは「地球に食料を、生命にエネルギーを」。要は「食」である。加藤政府代表が語る。
「食がテーマの万博で日本が何を発信するか、農水省と経産省も交えて3年間議論を重ねました。TPP交渉の影響がおよぶ中、日本の農林水産業の競争力を高めるという課題を抱える農水省は、食文化の発信から地方創生につなげたい。クールジャパンを推進する経産省は、食に関わる伝統産業を訴えたい。多くの案を50分前後で見られるようにまとめ、展示だけでなく、あっと驚くインタラクティブ(双方向)な演出を工夫しました。展示のあとにはレストランと、各自治体や団体が食に関わる持ち込みイベントを行う広場を設置。全体にJAグループの協力は大きかったですね」
行列中に前後の人と仲良くなるケースも
日本館の外観は、岩手県産のカラマツ集成材約1万7000本を、釘を使わずに組んだ“立体木格子”で囲まれている。が、その中に入る前に来場者は行列に疲れ切っているのではないか。20代の女性アテンダントに尋ねると、
「みなさん、やっと入れるのがすごくうれしそうなんです。2人くらいで来たのに行列の中で前後の人と仲良くなって、6人、8人のグループになっているケースも多いですね。長く待って入るせいか、初期のころより、館内を細かいところまでゆっくりとご覧になっています」
館内は、書家の紫舟(ししゅう)氏による書画がスクリーンに映し出される「プロローグ」なる部屋から始まる。人間と自然の共生の難しさを訴えているのだそうだ。
第1シーンヘ。「ハーモニー」という真っ暗な広い部屋に入ると、プロジェクション・マッピングで、水田や魚、エビ漁などが次々と映し出され、入館者から感嘆の声がもれた。
「暗い部屋に入ると、行列を作った外のことを忘れるみたいで、よく“すごくきれいだった”と声をかけていただきます」
と、こちらは30代の女性アテンダント。ここでは日本の食の産地を再現しながら、それを育む日本の自然や四季の移り変わりをアピールしているという。
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日本館では、日本の食材や料理などを映した多数の画像が次々と“流れ落ちる滝”や、映像の懐石料理を味わう特殊なシアターなども大評判になった。そしてもっとも大盛況だったエリアとは? 第2回【9年前のミラノ万博を席捲した「日本館」 大盛況のフードコートでイタリア人が「最高」と評した意外な日本食とは】は、実際に来館したイタリア人たちのコメントなども伝えている。