大阪万博が盛り上がらなくても9年前は…ミラノ万博の「日本館」が“行列9時間の超人気パビリオン”になった納得の理由
個性的すぎるマスコットや工事の遅れといったニュースに気を取られているうちに、実は開催まで半年を切っていた大阪万博。否定的な声も多いが、そもそも日本に魅力的なコンテンツが多いことだけは誰もが認めるところだろう。過去には海外の万博で、最強の人気コンテンツである「和食」をフューチャーした「日本館」が大成功を収めた例もある。
その海外万博とは、2015年10月末に閉幕したミラノ万博。連日、洪水のように人が押し寄せ、並ぶのが嫌いなはずのイタリア人が最長9時間もの行列を作ったというエピソードは、当時も盛んに報じられた。閉幕時に「展示デザイン」部門賞の金賞まで受賞した「日本館」には一体何が展示されていたのか。過去の成功体験として振り返ってみよう。
(全2回の第1回:「週刊新潮」2015年10月29日号「イタリア人が行列9時間! 参加140カ国中の断トツ! ミラノ万博『日本館』が圧倒的な人気になった理由」を再編集しました。文中の役職等は掲載当時のものです)
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【写真】インタラクティブに「和食」を学ぶ…ミラノ万博「日本館」の展示内容
行列を作れないイタリア人が9時間待ち!
イタリア人は行列を作れない、という声は昔から聞かれる。レジ前に並んでいても、たちまち横入りされるし、美術館やオペラのチケット売り場には、行列のかわりに黒山の人だかりができる。そんなイタリアで今、椿事が起きている。
「われわれも、イタリアの方の国民性や気質からして、こんなにお並びになるとは思いませんでした」
と、驚きを隠さないのは、ミラノ国際博覧会、すなわち万博「日本館」の陳列区域政府代表を務める加藤辰也氏。実際、くだんの日本館、記者が訪れた際も、10月9日が最長7時間、10日が同8時間待ちで、最も混雑した日には9時間待ちを記録したという。
なにしろ、行列好きの日本人が東京ディズニーシーやUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)で記録した8時間超を上回る行列を、イタリア人たちが作り、4000平方メートルと会場内でも有数の広さの敷地が、長大な列でぐるりと取り巻かれているのである。
開幕当時は会場全体に閑古鳥
もっとも、最初からこれほど賑わっていたわけではない。5月1日に開幕した当初は、訪れた協賛企業の社員によれば、
「まだ各所で工事をしていて、閑古鳥が鳴いていました。主催国イタリアは、10月末までに2000万人を集めると息巻いていましたが、誰もが無理だと思っていましたね。イタリア人に聞くと、準備が整うまで控えていたという人が多いんですが、日本館だけは、5月中から1時間ほど待つような状況だったんです」
日本館は万博会場の正面入り口から最も遠いエリアにある。過去の万博で多くの来場者を集めた実績を買われ、広い敷地を与えられる一方、遠くても人が集まるだろうからと“遠隔地”に配置されたという。そこに来場者が押しかけるにいたる経緯を、日本館の広報チーム長補佐、尾高健氏が振り返る。
「真夏も暑すぎましたから、最大でも2時間待ち程度でした。熱中症で倒れる方もいましたしね。それが9月以降、どんどん列が長くなったんです。当初は1時間の列でもあきらめる人が多かったのが、最近は列が列を呼び、待つのが嫌いだといわれるイタリア人が礼儀正しく並んでいる。朝、開門と同時に日本館めがけて走る方も多いです」
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