ホス狂いになった娘、育て方を間違えたのか…「優しい子だったのに」親たちが語る苦悩
【前後編の後編/前編を読む】娘が「ホス狂い」親たちの座談会 説得しても聞く耳もたず…「まるでカルト」洗脳されたわが子への絶望
「悪質ホスト」問題をめぐって「自業自得だ」という意見は根強い。勝手にホストにハマり、勝手に借金をつくったのだから、というわけである。同時に当事者である女性の“育ち”に原因があるのではないかという見方も少なくない。だが、ホス狂いだった娘をもつ母親は「それでは問題の悪質さが見過ごされてしまう」と訴える――。
娘がホストに狂い、家族が壊され、無力感に苛まれる親たち。一般社団法人「青母連(青少年を守る父母の連絡協議会)」の協力のもと行われた座談会の後編をお届けする。
「子育てを間違えたのか」
(Cさん ※娘が150万円を持ち出しホストに依存。行方知れずに)
自分の娘がこうなるまで、ホス狂いになる子って、ちょっと家庭に問題があったり、居場所がない子だと思っていました。だから自分を責めました。私も母子家庭で、娘が小学生くらいの時に離婚してしまった。寂しい思いをさせてしまったのかな……と。娘と連絡がとれなくなったあと、警察に相談しても、もう娘さんは20歳超えているし、介入できないと言われました。行政も、相談には乗ってくれるものの、150万円を持ち出したというのは高額だから、法テラスに行ってみたらどうですか、というくらい。娘のせいだ、って風に言われているような気がして。
(Hさん)
私は、娘と連絡がとれなくなって1年10カ月が経ちます。捜索願を出したら、居場所はわかったんです。でも「本人が帰らないと言っているので、強制できない」と警察から言われてしまって。
うちの娘の場合は、大学の卒業記念に、遊びで友達とホストクラブに行ったことがきっかけでした。広告代理店に内定もらって、すごく喜んでいたんですけれど、働き始めると、仕事のストレスも溜まっていったのかもしれません。終電で帰ってきたりとか、「ネットカフェに泊まるから」と帰ってこなくなったりして。
そんなに忙しいんだ……と思っていたのですが、だんだん携帯電話を2台持つようになったり、帰ってくると、変な、香水みたいな匂いが娘からしてくるようになったんですよ。同じ部屋の姉妹も「しょっちゅう男の人から電話がかかって来るみたい」と言っていて。彼氏かなと思っていたんですが、急に会社も辞めてしまった。そして1月初めに家を出たきり、帰ってこなくなってしまった。
LINEの返事もないので、心配して「捜索願出しちゃうよ」と伝えたら、やっと「もう帰りません」って返事がありました。その後、娘の部屋を片付けていたら、ホストの名刺とか、スカウトの名刺とか、風俗の日払いなんでしょうか、封筒がいっぱい出てきて。ああ、そういうことかと知りました。
こうなったのは、私のせいなのかもって、夜、いつも空を見てボロボロ泣いてしまいます。他の姉妹が病弱だったってこともあって、放ってしまってのがいけなかったのかと。健康保険の関係で、半年に1回、娘の受診歴が分かるんですよ。婦人科ばかり通ってる。それでまた涙しています。
(Dさん ※計1800万円を費やすも、娘の脱ホストが叶った)
私、この問題で何社かメディアから取材を受けていますが、皆さん「娘さんっておかしい子だったんじゃないですか」とおっしゃいます。育て方、どこで間違えていましたか、みたいなスタンスで取材に来ます。ただでさえ若い娘に何かあると、お母さんが悪いと言われがちですが、私はやっぱり違うと思います。圧倒的にホストが悪い。恋愛感情につけ込んで依存状態にさせるわけですから。その子の家庭環境という話になると、この問題の悪質さが薄れてしまう。
――Dさん母娘の経緯は、別記事「『わが家は狙われていたのかも…』ホストに狂った愛娘の“1800万円”を肩代わりした母の悲痛」および「ホス狂いの娘が『600万円を盗んで家出』 身も心もボロボロの母子はいかにして“生還”したのか」で取材した。ホストの「悪質さ」という点で、良心の呵責に耐えられなかったのか、ホストが心を病んだエピソードが語られている。前編で紹介したAさんのケースなど、時に“人間的”な一面がホストから窺えることもなくはないが……。とはいえ、娘を失ったFさんに対する態度を聞くと、どこか常識を逸している感覚であることは否めない。
(Fさん ※大阪から参加の遺族。娘が出稼ぎ先のホテルで亡くなった)
娘が亡くなったあと、ホストの男と会いました。亡くなった娘には姉がいて、生前、妹を沼から引き出そうと、お姉ちゃんはがんばってくれていた。だから向こうの男の連絡先も知っていたんですね。
娘の部屋から荷物を取りに行くついでに、会ったんです。こんにちは、初めましてとか、そんな感じでした。荷物これだけです、これもいりますか?と、普通にやりとりをしました。「明日、葬儀です。来ませんか」と言ったら「やめときます」と。怒りがわきましたが、もういいやと。何を言っても、何をやっても、もう娘は返ってこないから。全て諦める気持ちになっていました。
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