有名チェーンや老舗が次々と「空き店舗」に…香港を未曽有の「閉店ラッシュ」が襲う“特殊な事情”とは

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消費に積極的な層が海外流出

 もう1つの事情は、19年からの民主派デモに伴う混乱とコロナ禍の影響により、在住者の顔ぶれが一部変化したことだ。

 香港メディアの報道によれば、香港の人口は2019年に752万人、2023年末に750万人と2万人減少したが、永久居民(永住権を持つ人)で見ると736万5000人から722万9000人で13万6000人も減少していた。代わりに11万9000人増加したのは、各種ビザを取得して在住する流動人口。さらにビザ番号を調査したところ、19年から少なくとも29万6000人が英国、カナダ、オーストラリア、台湾に移住していることが分かった。

「香港人にとって海外移住は身近な選択肢ですが、移住先での仕事が単純労働系のアルバイトでも構わないという人は少ない。移住を成功させるのは、専門的能力や語学力、経済力があるプロフェッショナル人材、あるいは富裕層。すなわち香港在住時から消費に積極的だった層であり、19年からの移住者も彼らが中心です。世界的に問題視されている『頭脳流出』が本格化した結果、一般庶民の内需と購買力に影響が出ている面は否めません」

 香港政府は高学歴・高収入人材用の就労ビザを新設するなど、香港外からのプロフェッショナル人材誘致に積極的だが、空いた穴を埋められるかといえば微妙である。

「中国銀行香港が今年中頃、中国内地から移住したプロフェッショナル人材(18~60歳)600人を調査したところ、平均資産額は250万香港ドル(約5000万円)でした。対して、海外移民した人たちが香港の自宅を500万香港ドル(約1億円)以上で売却したケースは珍しくありません。そもそも資産の規模が違っていると言えます」

 香港のプロフェッショナル人材ほど稼ぐには、まだ時間が必要ということか。また、近年に中国内地から移住した人たちも、休日を粤港澳大湾区で過ごす傾向が強いという。

今後も「悪夢」は続く?

 もちろん不況は全体の話であり、飲食店以外も悲惨な状況が続いている。裁判所が清算を命じた企業の数は今年8月までに305社と、10年以降で最多だった昨年を上回るペースだ。つい2カ月前に有名スポーツクラブが「事業再編」の名目でいきなり全店を閉鎖し、支払い済みの会費をめぐって大騒動になったかと思いきや、開店25年目のドラッグストアチェーンが全店閉鎖を発表するなど、ニュースは絶えない。

 こうした香港の閉店ラッシュと不況に出口はあるのだろうか。

「閉店ラッシュの要因は、ほとんどが香港政府のコントロール外だと言えます。21年と22年には飲食業界に補助金を交付しましたが、現在の政府予測によると28年までは予算が厳しい。米大統領選でトランプ氏が勝利し、中国からの輸入品について追加関税を実行すれば、香港の再輸出にも影響が及んで不況がさらに長引くと予測されています。香港経済は中国経済次第ですから、今後も飲食店を中心に長い悪夢が続く可能性は大きいと言わざるを得ません」

 東洋の真珠は今、返還後最大の正念場を迎えている。

デイリー新潮編集部

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