「テンポが遅い」「家族の描写が薄い」…朝ドラ「おむすび」視聴率が全国で総崩れする深刻すぎるワケ

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家族が描き足りない

「おむすび」はどうして低調なのか。民放のドラマ制作者は「テンポが遅い」と指摘した。確認してみたい。

「らんまん」の第20回(2023年4月28日放送)は主人公・槙野万太郎(神木隆之介)が、自由民権運動のリーダー・早川逸馬(宮野真守)の紹介でジョン万次郎(宇崎竜童)と会い、「人の一生は短い。後悔はせんように」との言葉を与えられた。影響を受けた。

「ブギウギ」の第20回(同10月27日放送)の場合、ヒロイン・福来スズ子(趣里)が両親の郷里・福井へ法事のために訪れる。そこで自分の出生の秘密を知り、衝撃を受ける。スズ子の所属していた梅丸少女歌劇団の争議は終わっていた。

「虎に翼」の第20回(4月26日放送)は共亜事件の入り口だった。ヒロイン.猪爪寅子(伊藤沙莉)は父親・直言(岡部たかし)の逮捕には動じなかったものの、どうすればいいのか分からない。猪爪家の家宅捜索に入った検察に対し、手際よく対応したのは居候の佐田優三(仲野太賀)だった。

 一方、「おむすび」の第20回(10月25日放送)ではヒロイン・米田結(橋本)がハギャレン(博多ギャル連合)のメンバーと糸島フェスティバルに登場し、パラパラを踊った。

 その時、2004年。結は直後に1995年1月に経験した阪神.淡路大震災を思い出し始める。第21回は震災シーンを短く直接的に描いた。ここから展開が早くなるが、それまでの物語の経緯を考えると、やや唐突に映った。

 第22回以降はかなり直接的に震災直後の様子を描いた。結の姉・歩(仲里依紗、少女期・高松咲希)の親友・真紀(大島美優)は震災死する。

 ちなみに「あまちゃん」(2013年度上期)は2011年3月の東日本大震災の当日を全てジオラマで表した、「おかえりモネ」(2021年上期)は同震災の発生直前までを描いたあと、時を約7時間飛ばし、地震や津波は表現しなかった。

 また、NHKの東京のドラマ関係者が、家族の描写の薄さを疑問視するのには理由がある。朝ドラはどの作品も時代設定と作風がバラバラだが、序盤には一致していることがあるからだ。

「朝ドラの序盤は例外なく家族の描写、家族と主人公との関係性を細かに描きます。子役編の有無は関係ありません。主人公の一代記、半世記だから、物語の随所で家族が関わって来ますし、家族を描くことで主人公のキャラクターも浮かび上がりますから」(ドラマ関係者)

 確かに「おしん」(1983年度)以前から「虎に翼」まで朝ドラの出だしは家族。どの作品もしっかりと描いた。一方で「おむすび」の場合、ハギャレンや書道、野球とさまざまなことを取り込んだため、家族のことが描き足りなかったのではないか。

 厳しいことも書いたが、国民的ドラマとも呼ばれる朝ドラの深刻な状況は伏せておけない。

高堀冬彦(たかほり.ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部

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