「この番組が終わる時は戦争が起こる時だ」 西田敏行さんが語っていた「ナイトスクープ」に対する思い
高速で走る新幹線の中で軽妙にダンス
2003年に公開された井筒和幸監督のヒット作「ゲロッパ!」でも、主演した西田さんの芸達者ぶりがいかんなく発揮されている。
「映画の冒頭、新幹線の中で西田さんがジェームス・ブラウンの曲を歌いながら踊るシーンがあります。JRにお願いして実際に運行している新幹線を1両だけ貸し切りにしてもらってロケをしたんですが、あんな高速で走っている中で、軽妙に踊れる役者なんて、そうはいませんよ」(井筒監督)
音に対するセンスも抜群だった。
「『ゲロッパ!』の中では軽やかに関西弁を使いこなしていますが、アドリブもそれがあってこそできる技でしょう。ペットの大トカゲを引き寄せて顔につけるシーンで“あー、冷たぁ”とか、脚本にない細かいアドリブをテンポよく差し込んでくるんです。西田さんの芸は、天性の資質を持った俳優が、長い時間をかけてたどりつく至芸でした」(同)
03年に西田さんは心筋梗塞で倒れたが、それは「ゲロッパ!」の撮影を終えた後だった。
「この番組が終わる時は戦争が起こる時だ」
俳優業だけではなく、西田さんは01年に始めた「探偵!ナイトスクープ」の「局長」の仕事にも力を入れていた。西田さんの秘書役を長く務めた岡部まりが話す。
「西田さんはよく番組について『今の仕込んだ笑いは人をおとしめる笑いが多いが、“スクープ”は人間のおかしみを見て、思わずほほ笑んでしまうような悪意のない笑いでできている。この番組には人の偶然性、素がそのままに映っている。大阪でなければ撮る人も撮られる人もこんな無防備な姿にならない。これが許されているのはこの番組しかない』と言っていました」
番組を卒業する時にも、「『VTRを中心とした構造がある限り、この番組は100年続く。この番組が終わる時は戦争が起こる時だ』と。だから西田さんの素直さと、この番組はつながっているんです。西田さんが卒業した後もいろいろと相談に乗っていただいていました。西田さんの体調がすぐれなかったここ1年ほどはお会いしていませんが、LINEではやりとりしていました」(同)
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