「この番組が終わる時は戦争が起こる時だ」 西田敏行さんが語っていた「ナイトスクープ」に対する思い

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「セリフがどうこうというのを超越」

 95年の大河「八代将軍吉宗」で西田さんと共演した山田邦子も彼の心遣いに助けられた一人である。

「大河に出るのが初めての私がアガッているのを察して、一生懸命ふざけたりして緊張をほぐそうとしてくれたんです。実際、それで緊張がずいぶん和らぎましたね。麻布のバーに飲みにも連れて行ってもらい、そこに西田さんと仲が良い武田鉄矢さんのウイスキーのボトルがあって“あ、これ飲んじゃって構わないから”と……」

 山田はそう述懐する。

「西田さんは他の役者さんとはオーラが違い、側にいると本当に吉宗に見えました。しかも台本を広げているのを見たことがない。リハーサルギリギリまで関係のない話をしていても、本番となったらバシッと役に入る。セリフがどうこうというのを超越して、“吉宗ならこうだろ”といった境地にたどりついてしまっている感じでした」

「西田さんが話しているのか、黒ちゃん先生が話しているのか、見分けがつかない」

 NHKラジオのオーディオドラマ「新日曜名作座」で長らく西田さんと共演してきた女優の竹下景子は、93年に公開された山田洋次監督の映画「学校」でも西田さんと共演している。西田さんが演じたのは夜間中学の先生、黒井である。

「黒ちゃん先生役はご本人の温かい人間性とピッタリ合致していました。弱い人、日なたに出られない人への温かなまなざしは今でも忘れられません。生徒さんと話すシーンでは、西田さんご自身が感極まって、涙ぐみながら語っていました。これは台本ではなくてご自身の経験談なのでは、という場面もあり、もはや西田さんが話しているのか、黒ちゃん先生が話しているのか、見分けがつかないのです」(竹下)

「学校」で生徒の一人を演じた中江有里も言う。

「西田さんのすごいところは、普段と本番の境目があまりないところです。つまりお芝居をしていても、そう見えない。アドリブがすごいとよく言われますが、どれがアドリブか分からないくらい自然体。私も演者のはしくれですが、どうしたらあんなふうに演じられるのか、長年の謎です」

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