大谷翔平「50-50」ボールを落札した“台湾企業”の胸算用 現地でも無名な「富裕層向け投資ファンド」の正体とは
「“ダーグー”がまた打った」
〈UCキャピタルは、イベントとして50-50記念ボール展示のチャンスを企画するはずです。そして最終的には、大谷選手本人に50-50記念ボールを贈呈する。そういうシナリオが話題になるでしょう〉
そんな“予想”を書いた現地メディアもあったが、多くの台湾人にとっては、「記念ボールを見にいきたい」という望みより「台湾にそれほど資金力を持つ企業があったのか」という驚きの方が大きかった。台湾には昔から投資好きな人が多く、不動産、株式などの投資に異常なほど熱狂する。そんな台湾人も、IT関連株や半導体銘柄株だけでなく、「投資会社は記念球にまで価値を見出すのか」という意外性に目を見張ったようだ。
また、そもそも台湾で野球は非常に人気がある。プロ野球リーグ(6チーム)があり、リトルリーグの国際試合でも常に好成績を残すなど、人気スポーツの筆頭格を担っている。王建民(ヤンキース)、陽岱鋼(日本ハム、巨人)など、日本やアメリカのリーグで活躍する選手も多数輩出していることから、海外のプロ野球への関心も高い。殊に大谷翔平に関しては、同じアジア人としての親近感もあり、「ダーグー(大谷の北京語読み)がまた打った」などと頻繁に話題に上がる。そうしたなかで巻き起こったのが、「50ー50ボール」落札騒ぎだった。
折しも、日本や台湾のナショナルチームも参加する野球の世界大会「WBSCプレミア12」の予選リーグが、11月13日~18日まで台北で開催される予定だ。記念ボールはそのタイミングで、今年落成されたばかりの台北ドーム球場で公開されるのではないかという予測もある。台湾メディアも〈これを機に、日台の野球ファンの間の交流がさらに深まることに期待したいですね〉(TVBS新聞台)などと報じている。あるいは、来年3月には大谷がかつて在籍した北海道日本ハムファイターズが台湾で交流試合を行うため、その際に公開されることも考えられる。
もしかして鴻海? 落札者をめぐって大騒ぎ
台湾での野球人気、そして大谷人気ゆえに、最低入札額50万ドル(約7600万円)で9月27日から始まった「50-50」記念ボール争奪戦は、当初から大きな注目を集めた。
競売を主催した「ゴールディン」の代表が、「日本からの入札も積極的だったが、最終的に台湾企業に競り負けた」と発表すると、台湾メディアはまさに上を下への大騒ぎとなった。
当初「ゴールディン」は落札者について「野球と大谷翔平を愛する台湾の企業だ」とだけ言及し、企業名は明かさなかった。そして、ドジャースとヤンキースによって争われるワールドシリーズ終了後、落札者がゴールディンを訪問した際に明らかになると語ったのだが、この発言が10月25日のニュースで報道されるや、台湾ではたちまち「誰が記念ボールを購入したか」という憶測が飛び交った。
まず、新興の航空会社「スターラックス航空(星宇航空)」のCEOであり、ドジャースの広告主でもあるチャン・クオウェイ氏ではないかという説が飛び出したが、これはチャン氏本人が「私は50本打たれる方だ」と早々に否定した。
次いで、鴻海科技集団(フォックスコングループ)のカリスマCEOであるテリー・ゴウ氏、台湾野球協会理事長でもある中信金融グループのトップ、グー・チョンリャン氏の名前も挙がったが、最終的には前述のように、ワールドシリーズ終了を待たずしてUCキャピタルが名乗り出ることで騒動は一段落した。
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