出口調査の“ウラ”を見抜くコツは? 「議席予測」的中なら「社内表彰」も…テレビマンたちが語る「選挙特番」舞台裏
今回の衆院選も、各局は開票速報特番を放送した。横並びでの選挙放送となることから、勝敗は残酷なほどわかりやすく出るし、言い訳のしようもない。そのため、各局とも看板番組とコラボしたり、著名タレントや文化人を出演させたりと、必死の努力をしているのは毎回変わらない。威信をかけた戦いの裏側を見ると、テレビ局の実情が見えてくる。
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選挙特番には2つの評価ポイントがある。1つめはいわずもがなの視聴率である。もうひとつは20時に投票所が閉まると同時に速報する、各党の議席獲得予測数の正確さである。報道機関としての信頼性にもつながるので必死の戦いとなる。
20時の「獲得議席予測」公表の放送裏
20時に投票所が閉まると同時に、各局は出口調査結果を踏まえた議席予測数を速報する。今回も20時少し前から特番は始まり、「まもなく獲得議席予測発表」「出口調査発表まで〇分△秒」「議席予測まで〇分□秒」とサイドスーパーを出し盛り上げていた。NHKですら「投票終了まであと〇分×秒」と視聴者のつなぎ止めに必死だった。
各局は、調査会社やシステム会社と様々な改良を重ねて選挙データ分析を行っている。この出口調査の仕組み設計は秘伝の技とされており、ごく少数の担当者で引き継がれ改良を重ねているという。
この調査結果に基づき、20時になると、番組をモニターしている担当者が各局の数字を端末に入力し、全局の数字がまとめられてトップから現場に至るまで即時に回覧される。自局の数字が他局と比べて乖離が大きい場合には「おー」というどよめきが上がり、「大丈夫か、この数字?」など不安の声も出る。他局とさほど変わらない場合にはどこからともなく安堵の声が上がる。NHKに近い数字が出たときには特にそうだ。もっともNHKは、公共放送としての慎重さを体現し、かなり幅を持たせた数字を発表している。
出口調査のベテランデスクが見せる技とは?
各局には、投開票日の夕方には、大方の出口調査の生データが上がってくる。政治部の当確担当デスクたちは局の幹部も交えてどうこの数字を分析するのか慎重に議論を行う。例えば、今回の調査では各局とも自民党が弱く、立憲民主党が強い数字が出た。自公で過半数割れか否かを判断するきわどい状況であるだけに、各社では生数字をどのように見るべきか、激しい議論になったという。各局ともに、選挙区の状況を見てきた、票読みベテランデスクが存在しており、時には他局のデータや各政党の独自調査の数字を入手して、比較検討を行う。「これは立民が強すぎるだろ、取材でみるとこのあたりは追いあげるぞ。もう少し丸めて書いたほうがいいんじゃないか?」「(各局が加盟社として入手している)共同(通信)の数字と大きく乖離しているが大丈夫なのか」というような指摘が飛ぶ。
今回、テレビ朝日の予測した数字である自民党200議席は、200割れというインパクトに配慮したのではないかと読み解けるほどキリがよかった。逆に日本テレビの自民党174議席はなかなかチャレンジした予測であり、これを出したところに取材分析の自信が伺えた。実際に自民党が獲得した数字は191議席。200議席と予測し、立憲民主党が獲得した148議席を、142議席と予測したテレビ朝日が、“ニアピン賞”となった。
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