鉄道各社の「計画運休」に不満の声が集まる理由 現場からは「天気予報が当たってほしいと願うばかり」の声も

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計画運休は“伝家の宝刀”

 JRグループの場合、一社が計画運休を決めると、他の鉄道会社に与える影響も少なくないことを忘れてはならない。例えば、宮城県の仙台駅から愛知県の名古屋駅まで、東北新幹線と、東海道新幹線を乗り継いで向かう旅行客がいたとする。東北新幹線はJR東日本、東海道新幹線はJR東海の管轄だ。

 東北新幹線は動いているのに、東海道新幹線は計画運休で止まっている。当たり前だが、こうなると旅行客はすべての計画が狂ってしまうのだ。鉄道ファンならいくらでも代替手段を検討できるかもしれないが、ほとんどの旅行客は鉄道事情に詳しくない。そのため、時には駅のみどりの窓口や改札口で駅員に詰め寄り、代替案を聞くことになる。

 T氏によれば、「他社が決めた計画運休のクレームを、なぜ当社が受けなければならないのか…と不満をもつ駅員もいる」そうである。そのため、T氏は「計画運休はいわば“伝家の宝刀”。本音では、よほどのことでない限り、出してほしくない」と話す。

「仙台では晴れているのに名古屋では雨のため計画運休、というケースがあると最悪です。『今、ここでは晴れているのに、なぜ東京から先の新幹線を動かさないのか!』と無茶苦茶なことを言われるんです。確かに予定の計画が狂い、混乱してしまう気持ちはわかります。ただ、駅員に不満を言っても解決しないので、冷静になっていただきたいですね…」

駅員に怒りをぶつけても意味がない

 鉄道会社の職員が今も昔も悩まされるのは、こうした利用者からのカスハラだ。列車が止まったり、遅れたりする場合は、明らかに鉄道会社に非がある場合もあるが、地震や台風などの気象問題で利用者から理不尽な怒りをぶつけられる駅員はさすがに気の毒である。計画運休が広まった当初は、カスハラを抑止する一定の効果も期待されたといわれる。

 だが、取材をすればするほど、カスハラの根本的な解決になっているのかというと、微妙に思える。今年の計画運休でも現場で駅員に対する暴言はあったようだし、JR東海が会見を開いたことからも混乱ぶりがよくわかる。結局、計画運休をしても地獄、しなくても地獄というのが本当のところなのかもしれない。

 海外を旅してみるとわかるが、諸外国の鉄道はいい意味で時間にルーズである。ところが、日本人は鉄道に対して異常なほどの厳格さを求める。1分遅れるだけで駅員に食って掛かる人もいる。乱発される計画運休は、そうしたカスハラやクレームの産物と言っていいかもしれない。計画運休をしてほしくないのであれば、とにかく駅員に対する暴言や暴力をなくすことが先決ではないかと思う。

ライター・宮原多可志

デイリー新潮編集部

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