二葉百合子(93)とMAZZELが共演する異色の歌番組…! NHK「うたコン」の作り方
「リトグリ」が「美空ひばり」を歌う
流行曲や新曲を取り上げる歌番組が多い中、『うたコン』は毎回のテーマに沿った楽曲を出演者が披露している。そこには年代やジャンルというようなカテゴライズは取り払われている。まさにボーダーレスな時代の音楽番組といえる。
「『歌謡コンサート』時代から、毎回テーマを設けています。テーマは、ディレクターとプロデューサーが相談して決めています。出演者の選定も、“このテーマにあうのはこの曲だね”という形でアイデアを出し合っています。『アニソン&ディズニー特集』(‘24年6月18日放送)では、ささきいさおさんが『宇宙戦艦ヤマト』、FRUITS ZIPPER(‘22年結成の女性アイドルグループ)が『ラムのラブソング』(うる星やつら)を歌いました。『結婚ソング特集』(‘24年6月11日放送)では、西野カナさんの『トリセツ』を超ときめき♡宣伝部(’15年結成の女性アイドルグループ)がカバーしたのですが、これはアイドルが歌ったらまた違う曲の魅力が出せそうだという思いから企画しました。Little Glee Monster(’13年結成の女性ボーカルグループ)は、メンバーのポテンシャルが高く、うたコンでは美空ひばりさんやザ・ピーナッツの楽曲などをカバーしてもらっています。うたコンにとって、往年の名曲を取り上げるのは番組の大切な柱の一つ。温故知新ではないですが、そこに光を当てるのは大事だって考えていますね」
曲選びはどのように?
現在は、見逃し配信での視聴やテレビを持たない若い世代など、視聴形態も変わってきている。が、昭和では、家族そろっての団らんにテレビはつきものだった。『うたコン』が幅広い世代で一緒に楽しめるのは、出演者や楽曲に偏りがないからなのではないだろうか。
「番組の後半では最新の楽曲も取り上げています。懐かしい曲もあれば平成のヒット曲も入れつつ、令和のあの曲も聴いてみたいというニーズを意識しています。出演者のラインナップも若手ばかりやベテランばかりに偏らないように、ちょうどよいバランスを心がけています。放送の一週間前に曲順を発表しているのですが、本当に直前まで考えていますね。私は昭和40年代の曲はリアルタイムでは知らないので、年上の放送作家の方に“この曲はどれくらいヒットしたのですか”と訊ねたりもしています。幅広い年代の放送作家やプロデューサー、ディレクターと曲を決めています」
そんな篠原氏は現在49歳。‘97年にNHKに入局以降、「音楽番組をやりたい」という熱意で、前身の『歌謡コンサート』や『SONGS』も担当していたという。今でも音楽チャートをウォッチし、気になったアーティストのライブには足を運ぶ。
「ディレクターもそれぞれライブを観に行ったりしています。意外と好きなジャンルも違っていて、昭和歌謡に詳しい若いスタッフもいますね。私自身は子どもの頃に『ザ・ベストテン』や『ザ・トップテン』で、チェッカーズや松田聖子さん、中森明菜さんの音楽を聴いて、ブラウン管のなかの世界に憧れたのがこの仕事の原点かもしれません。中学生になると、尾崎豊さんや浜田省吾さんなどシンガーソングライターにもハマりました。そこから彼らが影響を受けた音楽は何だろうと、ビートルズだったり、ローリング・ストーンズも聴くようになりました。うたコンも、出演者の方の楽曲を聴いて、昔の曲にも興味を持ってもらえるきっかけになると良いと思っています」
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【後編】では、番組が続ける「生放送」へのこだわりについて話を伺った。
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