どこに不倫する“隙”が?幼なじみと地元で築いた幸せな家庭…42歳夫の「世界」が揺らいだ出来事

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【前後編の前編/後編を読む】初恋の先生と「駆け落ち不倫」した42歳夫 3年ぶりの再会で妻が見せた予想外の反応とは

 不倫関係だとしても、それが「本物の愛」と信じて突き進むカップルもいる。もちろん、何が本物で何が偽物かは誰にもわからない。結婚した相手とうまくいかず、これ以上、我慢することに意味がないと思うなら離婚は最優先の選択肢かもしれない。ただ、離婚もせずにずるずると不倫をすると、世間から非難を浴びがちだ。

「そうなんですよねえ。しかも結末もなんだかかっこ悪いというか……。はっきりしない男なんですよ、僕は」

 田上由晴さん(42歳・仮名=以下同)は、自分のダメさ加減を嘆くように首を振った。その顔色はどこか冴えない。180センチ近い高身長で痩せぎす。心にしみこんでくるような、低めの温かい声が特徴的だ。

16歳で“人生最悪の挫折感”

 彼が結婚したのは25歳のとき。相手は幼稚園からの幼なじみで同い年の葵さんだ。家も近所だし、父親同士が同じ工場で働いており、母親たちも仲がよかった。

「親たちが密約を交わしていたのかもしれませんね、子どもたちを結婚させようって。そう思うくらい両家は仲がよかった。僕には妹がいて、葵にも妹がひとりいたんですが、どちらかの家でいつも一緒に遊んでいました」

 高校だけは違う学校だった。成績優秀な葵さんは県でもいちばんと言われる高校へ行ったが、サッカーに没頭していた由晴さんは推薦でサッカーの有名校へと進学した。ところが1年生の夏に交通事故で大ケガをし、プロを目指すどころかクラブ活動すらできなくなった。

「16歳にして人生最悪の挫折感を味わいました。入院して毎日、天井ばかり見ていた。ケガが治って日常生活に支障がなくなったとしても、プロとしてサッカーをやるのはむずかしい。それがわかったとき、生きる気力を失いました」

 病院の窓から身を投げようとしたこともある。たまたま看護師に見つかり、その後は精神科の医師が毎日、話を聞くために来てくれた。だが彼は、誰とも話さなくなっていった。

「親でさえ僕をどう扱っていいのかわからなくなっていたようです。でも葵だけは毎日やってきて、いつもと同じように接してくれた。『オレがサッカーできなくなったの知ってるだろ』とあるとき言ったら、『でもよっちゃんはよっちゃんでしょ』って。ありがたかったけど、こっちは拗ねていたから、結局、葵にオレの気持ちはわからないよなと嫌味をぶつけたりもしていました」

 数ヶ月の入院とリハビリを経て彼は復学したが、すでに学校そのものに興味をなくしていた。サッカーができないなら、その学校にいる意味もなかった。

「2年生になる前に退学しました。県立高校に転校しようと思ったんですが、成績が悪くて転校できなかった。そこでまた挫折感が大きくなりました」

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