抵抗する被害者の後頭部に、「モンキーレンチ」をフルスイング…法廷で涙を流した「実行犯リーダー(23)」が明かす「ルフィ事件」の非道

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「ルフィ」らを名乗る指示役が関与した広域強盗事件は、その短絡的な動機と杜撰な計画、凶悪な犯行態様で全国を震撼させた。そのうち6件について実行犯を務めたとして逮捕起訴された永田陸人被告(23)の裁判員裁判が、10月18日から東京地裁立川支部で開かれ、同月24日に検察官は永田被告に無期懲役を求刑した。

 前編では、法廷での傍聴を元に、永田が関与した3番目の事件、すなわち、広島市内での強盗殺人未遂事件について詳述した。

 2022年12月21日、3名の指示役、永田被告含む6人の実行犯、運転手などで構成された犯行グループは、広島市内の時計買取販売店兼住宅への強盗を敢行する。ここには父親(当時81)、母親(同75)、事件で大きな被害を負うことになる息子(同49)が住んでいた。

 実行役らは指示役の「キム」から事前に、「殺しちゃいけませんよ」との指示を受けていた。しかし、住宅へ押し入った永田らは、家人の激しい抵抗に遭った。とりわけ息子には3人がかりで襲い掛かったが、制圧できないままだった。そこで、実行犯のリーダー格・永田は焦り、凶悪な手段に出たのである。

【高橋ユキ/ノンフィクションライター】【前後編の後編】

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永田被告の証言

 2件目の中野での強盗を経て、永田被告は実行役リーダーとして広島の“案件”を任されていた。この頃、他の実行犯から“ヘッド”などと呼ばれてもいた。リーダーの威厳を示さなければという焦りのなか、ズボンのポケットに突っ込んでいたモンキーレンチを右手で掴み、息子を殴ったのだ。

「フルスイングで後頭部めがけて殴りました。反動でモンキーレンチが後ろに飛んで行きました。死ぬとは思っていなかった。これまでの経験で、もっと大きなモンキーレンチで人を殴って、頭から血が吹き出していても、特に気絶することもなく血が出たままだったということもありました。首から上ならどこを殴っても、軽めの脳震盪を起こして気絶すると分かっていた。腕を折ったとしても、根性あるやつは抵抗してくる。首から上が手っ取り早くて楽だと思ってました」(永田の被告人質問)

やっちゃったかもしれない

 息子はよろよろとしながら中腰になったところで別の実行役からその顔面を殴られ、床に仰向けに倒れた。鈍器での頭部の殴打を軽く考えていたという永田被告は、それを見ても慌てることもなく、物色のために1階に下りる。目当ての金庫を見つけ、2階に戻ると、息子が倒れている場所に血溜まりができていたことでようやく事態を飲み込んだ。「まずいな、やっちゃったかもしれない。想像していた状況じゃなかった」と永田被告は思ったというが、しかし自分たちが強盗であることから、救急車を呼ぶことはできない。“金庫の暗証番号を知っている父親に金庫を開けさせて早く撤収する”ことが最善策だと考え、父親を1階に連れてゆき、金庫を開けるように求めた。父親も「強盗が『金庫はどこにある、番号を教えろ』と言っていたので現金を狙っていることは分かっていたが、息子が頭から血を出して倒れている。一刻を争う。現金を渡して早く出ていって欲しいと思っていた」と当時の苦悩を調書に語っている。

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