「駅の売店で買ったおにぎりの包装紙はどこに捨てる?」 駅の「ゴミ箱」が撤去されたことで何が起きたか?

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駅で商品を売るのにゴミ箱を撤去

 コンビニまでもがゴミ箱を撤去してしまうと、行き場をなくしたゴミはどこに行くのだろうか。駅近くの公園に置かれた空き缶のリサイクルボックス、もしくは駅のトイレのなかに捨てる人が増えてしまったのである。どこかの施設がゴミ箱を無くすと、その代わりに別の施設でゴミが溢れる…という負のサイクルに陥っているのがわかる。

 駅構内のトイレで清掃作業に当たっていた清掃員に話を聞くと、トイレにゴミを捨てていく人は本当に多いそうだ。「トイレの個室、特に多目的トイレは人目に付かないからね。捨てていく人は多い」と話す。トイレのように、人目に付きにくい密室はゴミを捨てられやすいようだが、「トイレはそのイメージからモラルのない捨て方をする人が多すぎる」と、清掃員は嘆く。

 事業者がゴミ箱を置くと、不法投棄に必ずと言っていいほど悩まされる。確かに、駅のゴミ箱に家庭ゴミが持ち込まれるケースは後を絶たないし、問題視するのはわかる。だが、筆者は鉄道会社がゴミ箱を撤去するのはあまりに無責任であり、即座に復活させるべきだと考える。というのも、鉄道会社は駅構内でテナントビジネスを展開し、駅の中で様々な商品を売っているためだ。

 あちこちで商品を売りまくって儲けているのに、ゴミ箱をなくすのは無責任極まりないのではないか。駅のコンビニでは雑誌や食品が売られている。駅の中で買って食べ終わったおにぎりやパンの包み紙をどこに捨てればいいのか。それをすべて「ゴミをお持ち帰りください」といって消費者に処理の責任を押し付けるのは、あんまりではないだろうか。

お客様の理解は得られていない?

 こういったゴミ箱の撤去について説明を求められると、鉄道会社は決まって「お客様の理解は得られていると思う」などとコメントをする。実際、2022年、駅のゴミ箱が各地で撤去された際、新聞各社の質問にそう答えている鉄道会社は多かった。しかし、単に利用者が苦情を言わないだけであり、実際は不満が鬱積していると思うのだが、どうだろうか。

 また、日本は公共の場にゴミ箱が少なすぎる。特に観光地のゴミ箱不足は深刻で、首都圏でもインバウンドが増加しているのに駅からゴミ箱が減らされているため、人目に付きにくい裏路地や密室のトイレ、さらにはビジネスホテルのゴミ箱などはゴミで溢れかえっているという話を聞く。

 先日、線路にゴミをポイ捨てする人を目にしたし、トイレのコーナーに飲みかけのコーヒーを放置するおじさんの姿があった。誰かがゴミを捨て始めると、続けざまにゴミが捨てられるようになり、一気にモラルが崩壊するという指摘もある。駅を利用する人たちは、口にしないだけで、ゴミ箱がないことを不便に感じているのではないだろうか。

 繰り返すが、鉄道会社は経費節減を進め、本業の鉄道の利便性を低下させている一方で、駅構内でビジネスをすることに躍起になっている。駅の土地は鉄道会社のものだが、準公共空間と言っていい空間だ。そんな場所でモノを売りまくっているのだから、企業の責任でゴミ箱を維持すべきではないかと思う。

ライター・宮原多可志

デイリー新潮編集部

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