取手市「中3いじめ自殺」10年目の真実に迫る なぜ調査報告書はでっちあげられたのか
いじめをほのめかすくだりが
梶原教諭が美恵子さん自殺の第一報を聞いた時、別の学年にいた同姓の女子生徒を思い浮かべたほど、彼女の自殺は意外だった。自殺の動機が皆目見当たらなかったからだ。
美恵子さんの両親は、2015年11月10日の夜11時ごろ、美恵子さんが自室でぐったりしているところを見つけ救急車を呼んだ。死亡が確認されたのは翌11日未明である。最も身近にいた両親でさえ、「なぜ自殺を」と当惑し、その理由が分からず悲嘆にくれるばかりだった。両親は、美恵子さんの死の直後は、学校や教育委員会に対して特に苦情を申し立てていない。
ところが、自殺から5日後、両親は美恵子さんの日記を発見する。そこには学校生活や在籍していたクラスへの不満、友人関係の悩みがつづられており、「いじめられたくない。(ひとり)ぼっちはいやだ」などと、いじめをほのめかすくだりがあった。ただし、いじめの被害を具体的に記してはいない。
いじめに関する回答は皆無
この日記を読んだ両親は、「娘はいじめられて悩み自殺した」と主張し始め、学校と市教委に調査を依頼した。そこで学校と市教委は、3学年の全クラスの生徒たちを対象にアンケートと聞き取りを行った。だが、美恵子さんに対するいじめ、いじめらしき出来事を見聞きしたとの回答は皆無。代わりに複数あった回答は、「家が厳しい」というものだった。
美恵子さんは幼い頃からピアノを習い、両親は彼女をピアニストにしたかったようだ。そのため彼女は学校で部活動は行わず、ピアノのコンクールのために学校を欠席することもあった。親の方針で、友達付き合いや携帯電話の使用、外出についても制限されていた。美恵子さんの自殺直後から、川村家のこうしたしつけの厳しさが取り沙汰されていた。両親はこのような声や調査結果に強い不満を持っていたようだ。
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