中日・落合監督の“非情采配”に賛否 日本シリーズ「まさかの交代劇」から5年後に起きた歓喜の瞬間
10月26日に幕を開けたプロ野球日本シリーズ。今年で75回目を迎える頂上決戦の長い歴史の中で、完全試合が達成されたのは、2007年の中日2投手の継投による1度だけ。その試合では、8回までパーフェクトを続けていた山井大介が、完全試合まであと3人という9回に交代を告げられる“非情采配”が賛否両論を呼び、今なお記憶に残るゲームとなった。【久保田龍雄/ライター】
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スタンドのあちこちから悲鳴にも似たどよめきが
同年、入団5年目の山井は、中日が3勝1敗と日本一に王手をかけたシリーズ第5戦で、先発のマウンドに上がった。
森繁和バッテリーチーフコーチは、シリーズ前から日本ハムの先発がダルビッシュ有と予想される第5戦に、“秘密兵器”山井の先発を決めていたという。
1年目の2003年に31試合に登板し、6勝を挙げた山井は、その後右肩を痛め、06年は1軍登板なし、翌07年もチームが巨人、阪神と三つ巴のV争いを演じていた8、9月に計6勝を挙げたものの、14試合登板にとどまり、クライマックスシリーズ(CS)も肩の違和感を理由に登板を回避していた。
この結果、5、6月の交流戦で山井と対戦なしで終わった日本ハムは、日本シリーズ用に偵察部隊を送ったCSでも山井を見ることができなかった。エース投入で必勝を狙う日本ハムに、データの少ない山井をぶつけるのは、ある意味妙手と言えた。
トレードマークのゴーグルを着けて第5戦のマウンドに上がった山井は、「自分で落としても、(第6戦以降は)調子の良い川上(憲伸)さんや中田(賢一)が残っている」と自らに言い聞かせ、初回から飛ばした。
初回は森本稀哲を遊ゴロ、田中賢介を空振り三振、稲葉篤紀を二ゴロと3人で片づけると、2回もセギノールを空振り三振、工藤隆人を三ゴロ、稲田直人を空振り三振と付け入る隙を与えない。
前半は鋭く曲がり落ちるスライダーが冴えわたり、2回に平田良介の犠飛で1点を先制すると、最少リードの後半は「一発を警戒して」丹念に低めをつく。
4、5回ごろに右手中指のマメを潰すアクシデントに見舞われ、やがて、ユニホームの右太もも部分に血が付く状態になったが、気力で投げつづけ、6、7、8回も1人の走者も許さない。完全試合まであと1イニング、3人となった。
そして、1対0の9回表、地元・ナゴヤドームのスタンドを埋め尽くした中日ファンから「山井!山井!」の大合唱が沸き起こった直後、「ピッチャー、山井に代わりまして岩瀬(仁紀)のアナウンスが流れる。「エーッ!?」と、スタンドのあちこちから悲鳴にも似たどよめきが起きたのは言うまでもない。
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