「背脂チャッチャ系」「豚骨醤油」の記述はナシ…35年前の「ラーメンガイド本」を読んで分かったラーメン文化の劇的すぎる進化

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35年で多様化したラーメン界

 このようにラーメンの価格を35年前と比較してみたが、それなりに順調に値上げは達成されているようである。いずれは一杯1500円になる未来もあるだろうが、それまでに我々は収入を増やすべく日々労働に勤しめばいいということだ。

 なお、『ベストオブラーメン』を読んでわかった、35年前のラーメンのトレンドとしては、醤油ラーメンにナルトが入っている例が多いということだ。今ではあまり見ることはないものの、ナルトはラーメンに欠かせなかったようだ。そして現在は「背脂チャッチャッ系」と呼ばれる「土佐っ子」やホープ軒に関する記述に目を通すと、“チャッチャ系”という言葉は使われておらず、「脂をドサッドサッとふりかける」という表現になっている。

 さらに、現在では普通に見られる「魚介だし」「豚骨醤油」「家系」という言葉はまったく出てこず、基本は豚骨と鶏ガラである。旭川のラーメンについてのみ、鯵の丸干しを使っている店があると紹介されている程度。全般的にいわゆる「東京ラーメン」が35年前には全盛期で、まだまだ九州の豚骨ラーメンはニューウェーブ扱いされている感がある。

 また、和歌山ラーメン、富山ブラック、徳島ラーメン、尾道ラーメン、台湾ラーメンといったご当地ものもそれほど掲載はされていない。この35年でいかにラーメンが多様化を果たしたか、という証拠が同書には記されているのである。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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