期待以上か、裏切りか… 明暗分かれた12球団「2023年ドラ1選手」のシーズン1年目を振り返る

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 10月24日に開かれたプロ野球のドラフト会議。何といっても注目を集めたのは、やはり1位指名を受けた選手たちだ。過去を振り返っても、球界を代表するような選手はドラフト1位でプロ入りしているケースが多い一方で、必ずしも全員が期待通りの活躍を見せられるわけではない。果たして、1年前に指名された12人はどうだったのか。改めて“黄金ルーキー”の1年目を診断してみたい。【西尾典文/野球ライター】

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文句なしの活躍

 西武の左腕、武内夏暉(国学院大出身)は、文句なしの活躍を見せた。開幕ローテーション入りを果たすと、デビューからいきなり5連勝を記録。疲労が考慮されて二軍で調整した時期もあったが、大きな故障なく、1年を投げ切り10勝6敗、防御率2.17という見事な成績を残した。チームが記録的な低迷となったシーズンの中でこの数字は見事という他ない。3球団が競合する目玉選手だったとはいえ、他球団のスカウトも武内の活躍には驚いたという。

「もちろん1年目から一軍である程度は勝てるとは思いました。しかし、ここまでの成績を残せるとは……。大学時代もそうでしたが、投げるたびに成長しているような印象を受けますね。武内が活躍できた背景として、もうひとつ大きかったことは、捕手の炭谷(銀仁朗)の存在ではないでしょうか。武内の良さは、内角にしっかり強いボールを投げ切れるところ。炭谷は、それを上手く生かしているように見えました。武内も、炭谷のリードだからこそ、思い切って投げられたのでは。ボールの質が高いので、来年以降も、さらに成績を伸ばすのでないでしょうか」(関東地区担当スカウト)

 前出のスカウトが話すように、今年、武内が先発した21試合のうち20試合は炭谷が先発マスクをかぶっている。持ち味を引き出してくれるベテラン捕手がいたことも、武内にとってはプラスと働いたようだ。

良くも悪くも天真爛漫な性格

 武内に次ぐ好成績を残した投手は、楽天の左腕、古謝樹(桐蔭横浜大出身)と巨人の右腕、西舘勇陽(中央大出身)である。

 古謝は、開幕一軍入りこそ逃すも、5月下旬から先発ローテーションに加わり5勝をマークした。防御率は4.32と不安定なところがありながら、先発した15試合中14試合で5回以上を投げ切り、試合を作った。入団前は本格派右腕と呼ばれていた古謝だったが、変化球でしっかり勝負ができた点が好投に繋がった。

 一方、西舘は、開幕からセットアッパーに定着して、いきなり10試合連続無失点を記録した。夏場に少し調子を落として、二軍で再調整となる。最終的には28試合に登板して、1勝3敗20ホールド1セーブ。シーズン終盤に、1試合だけ先発でテストされた。エース・菅野智之がメジャーに移籍する可能性が高く、西舘が来年はローテーション争いに加わりそうだ。

 DeNAの度会隆輝(ENEOS出身)は、野手で最も成績を残した。開幕戦でいきなりスリーランを放つと、翌日もツーランを含む4安打の大活躍。徐々に調子を落とし、6月以降は二軍でプレーすることが多かったが、75試合に出場して64安打、3本塁打、24打点、打率.255という成績は、ルーキーとしては上出来だろう。

 ただし、社会人時代のチーム関係者は、プレー以外の面で“不安要素”があったと指摘する。

「良くも悪くも天真爛漫な性格で、それが誤解されることがあると思いますね。社会人時代も、休日練習を命じられて『なんでやらないといけないんですか?』みたいなことを笑いながら、言っていたこともありました……。本人は全く悪気がないのですが、そういう態度を生意気だと感じる人もいますからね。能力の高さは間違いないので、上手くかわいがってもらいながら、力を発揮できると良いのですが……」

 ヒーローインタビューで見せた度会の派手なパフォーマンスに、他球団のファンから批判的な声が飛ぶこともあった。だが、全ては結果のプロ野球。来年はさらに成績を伸ばして結果で雑音を封じ込めたいところだ。

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