1200万人動員の韓国ホラー「破墓/パミョ」は「反日」映画か? 「娯楽映画に政治を見る」ことの愚
跡継ぎの男子のみが次々と原因不明の病に倒れる富豪一族。その元凶である先祖の墓から、「この国にいてはならない“ヤバイもの”」が解き放たれることに――。今年の春に韓国で公開された映画「破墓/パミョ」は、1200万人動員の大ヒットを記録したオカルトスリラーだ。公開当時から一部マスコミで言われているのが、この映画が「反日的」だという言説である。墓から解き放たれた“ヤバイもの”が日本にまつわるものだからである。果たして本当にそうなのか。【映画ジャーナリスト/渥美志保】
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「反日的」と言われかねない要素
結論から先に言えば、筆者は「破墓/パミョ」が「反日的」だとは思わない。この記事では映画の内容に一部ネタバレで触れつつ、そこをつまびらかにしていきたい。(※映画未見の方は、ぜひ映画を見てからお読みいただきたい)
映画は、巫堂(ふどう、ムーダン。様々な種類の神を憑依させる宗教者)の師弟コンビ、ファリムとボンギルがある韓国系アメリカ人の大富豪からの依頼を受けて米国に渡るところから始まる。後継者が次々と原因不明の病に見舞われた大富豪は、ついに神頼みに至ったのだ。生まれたばかりの当主の息子を見たファリムは、その原因が韓国に埋葬されている祖父の墓にあると気づき、解決策として「改葬」(棺を別の場所に移すこと)を提案する。
韓国に戻った2人は、墓相を見る風水師サンドクと、改葬を仕切る葬儀師ヨングンのコンビとともに、「改葬」にあたることに。だがもちろん様々な不測の事態が起こり、そのオカルト的展開の中で何人もの関係者の命が奪われてしまう。
実は映画には、最初から「反日的」と言われかねない要素が埋め込まれている。まずは主人公4人の名前が、かつての抗日闘争の活動家の名前であること。そして呪われた一族は、日帝時代の日本に協力して財を成した「親日派(チニルパ)」である。
だが、その色がより強まるのは、呪われた一族の話が一段落した後に始まる全く新たな展開においてだろう。ここに、まことしやかに囁かれた日帝時代の都市伝説――日本軍が韓国の風水的な名所に、国の精気を奪う目的で鉄杭を打ち込んだという「鉄杭事件」が絡んでくる。棺を運び出すために掘り返された墓穴には、かつて日本の陰陽師によって、「鉄杭」以上にヤバイものが密かに埋められているのだ。
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