“昭和風ドラマ”が異例の345万回再生 「友近」サスペンス劇場がYouTubeで大バズリする理由

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懐かしくて面白い

 そんな彼女の芸の集大成とも言えるのが、ベテラン演歌歌手の水谷千重子というキャラクターである。圧倒的な歌唱力とお茶目な性格が売りの演歌界の大御所という設定。他愛もない冗談を言って「バカ言ってる」と自分にツッコミを入れるのがお決まりのパターンだ。

 最初はネタとして演じていただけだったのだが、そこからキャラクターがどんどん独り歩きしていき、バラエティ番組や音楽番組にも水谷が出演した。さらに、CDもリリースされ、全国を回るライブツアーも開催されるまでになった。今では明治座などで歌謡ショーが開かれ、彼女の友人として実在する大物歌手なども出演している。

 今回の「友近サスペンス劇場」も、そんな友近の理想の具現化と言えるものだ。彼女はこの昭和風ドラマの主演女優として、当時のサスペンスドラマにおける「あるあるネタ」を忠実になぞっていく。彼女の相棒役を務めているのは、モグライダーの芝大輔。芝はイケメン芸人として知られているが、一昔前のハンサム顔という雰囲気があり、昭和風ドラマの世界観に合っている。作中の2人の他愛もない掛け合いからは、昔のドラマっぽい軽さと楽しさが伝わってくる。

 当時のサスペンスドラマを知っている世代が見れば、懐かしくて面白いと思えるのはもちろん、それを知らない若い世代が見ても、一周回って新鮮に感じられるのは間違いない。制作陣は、最先端の映像技術を駆使して友近が理想とする昭和風サスペンスドラマの世界観を作り上げた。友近とスタッフの細部までのこだわりが見る人に伝わったからこそ、ここまでの人気になったのだろう。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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