西田敏行さんが憧れ続けた「伝説の喜劇人」 ついに叶わなかった“共演”のチャンスは2回あった

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共演したいと願い続け……

「男はつらいよ」への出演はたった10秒で終わったが、当時の西田は「釣りバカ日誌」シリーズがスタートし、日の出の勢いだった。寅さんの向こうを張る形で、同じ松竹がシリーズをスタートさせた88年には、「男はつらいよ」と同時上映された。同時上映は7本。動員も配収も寅さんと肩を並べるほどに成長し、松竹の二枚看板として屋台骨を支える人気シリーズになった。

 10秒出演は今風にいえば、「寅さんと釣りバカのコラボ」だが、そんな中でも、西田の胸の内は憧れの偉大な喜劇人、渥美清と「男はつらいよ」で共演したいと、ずっと思い続けていたのだ。

 西田には一度だけインタビューを受けてもらったたことがある。テレビ朝日で13年に放送された伊集院静原作の「いねむり先生」で、彼が小説のモデルの作家・阿佐田哲也を演じた時だ。酒席の話がテーマだった。若い頃は酔って議論するのが大好きで、浴びるほど飲んでしまい、何度も倒れかけた。

「そんなのはロクな飲み方じゃない! 吐くなら飲むな。酒がもったいない」

 と、先輩に怒られたという。それからは酒とのいい付き合いができるようになった。

 渥美と共演してうまい酒を飲みたかったか。いや、渥美は劇中ではグラスを煽るが、若い時に肺を病んでから、酒を口にしなかった。共に芸達者な渥美と西田のこと。共演が実現していたら、どんな芝居を見せてくれただろうか。

峯田 淳/コラムニスト

デイリー新潮編集部

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