「メジャー球団の懸念は年齢よりも、むしろ……」 35歳「菅野智之」メジャー挑戦 専門家が明かす“最大のリスク”とは

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 菅野智之の目には涙。阿部慎之助監督は「選手を批判しないであげて。僕が勝たしてあげられなかった」と敗戦の責任は指揮官にあることを強調した。巨人とDeNAの死闘は10月21日、遂に終止符が打たれた。そしてセ・リーグ最多勝と最高勝率の2冠に輝いたベテランピッチャーにとっては、あまりにも悔しいクライマックスシリーズとなった。

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 菅野は第2戦では先発して敗戦。最終戦ではチームの守護神として8回から登板し、完璧な投球を披露、回またぎで9回も続投した。

 しかし、DeNAの牧秀悟に痛恨のタイムリーヒットを許し、再び敗戦投手となってしまった。

 そもそも第2戦でも7回6安打2失点は好投といっていい内容だった。ただ打線の援護がなく、チームは1-2で惜敗した。

 第2戦が終わると阿部監督は「精いっぱい頑張ってくれたし、何とか最少失点でやってくれた」──と菅野が敗戦投手となったにもかかわらず、高く評価した。菅野は「同点に追いついてもらった後の失点が良くなかった」と悔やんだ。

 菅野は今季、絶好調だった。15勝3敗、防御率は1・67。そしてオフに海外FA権を行使することが明らかになっており、野球ファンの注目を集めている。改めて経緯を振り返ろう。

 アメリカのスポーツ専門局・ESPNは10月4日、巨人の投手・菅野智之が海外フリーエージェント権を行使し、メジャーリーグ(MLB)に挑戦すると報道。翌5日、東京ドームで行われたチームの練習が終わると報道陣の取材に応じ、「向こうでプレーするという気持ちでいる」と報道を認めた。担当記者が言う。

「日本のスポーツメディアは、論調が2つに割れています。菅野さんは沢村賞を2回、セ・リーグのMVPを2回受賞するというプロ野球を代表する名投手です。これだけの投手がメジャーで通用しないはずはない、という記事は少なくありません。その一方で、年齢を不安視する報道も目立ちます。菅野さんは1989年10月生まれの35歳。これまでの日本人選手を振り返ると、2004年にヤクルトからホワイトソックスに移籍した高津臣吾さんや、2010年に巨人からメッツに移籍した高橋尚成さんが35歳でした」

年齢よりケガが不安!?

 1995年、近鉄からドジャースに移籍した野茂英雄氏は26歳、2003年に巨人からヤンキースに移籍した松井秀喜氏は28歳だった。やはり20代で移籍した日本人選手に比べると、高津と高橋の2氏や菅野は“オールドルーキー”という印象を持ってしまう。

 ところがメジャー研究家の友成那智氏は「メジャーのスカウト担当やフロントは、菅野さんの年齢はそれほど気にしないと思います」と言う。

「例えばパドレスのダルビッシュ有さんは38歳です。黒田博樹さんは39歳でヤンキースのエースでした。メジャーの各球団が懸念するのは、むしろ菅野さんのケガだと思います。2021年から菅野さんは右肘の違和感を訴えることが増えました。以前の菅野さんなら基本的に、防御率は1点台から2点台でした。ところが21年から23年は3・19、3・12、3・36と3点台に悪化。特に23年は右肘の違和感で開幕に間に合わず、14試合に先発して4勝8敗と不本意な成績に終わりました。メジャーの各球団はケガの影響で、21年から23年のシーズンに似た成績になってしまうことを懸念しているはずです」

 似た例としてはメッツの千賀滉大が挙げられる。2023年のシーズンは12勝7敗、防御率2・98と大活躍。ところが今季は開幕前の2月に右肩後部の張りが見つかり、レギュラーシーズンを棒に振ってしまった。

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