キノコ狩りで「遭難」する人が減らない納得の理由 「家族にもどこの山に入るか教えない“名人”もいる」
キノコ狩りで遭難多発
秋になると必ず報じられるのが、キノコ狩りで遭難した人のニュースである。特に筆者の故郷である秋田県では、キノコが郷土料理に欠かせない食材であることからキノコ狩りが盛んであり、10月頃にはほぼ毎年のように遭難者が出る。今年も、キノコ狩りに山に入った高齢者が遺体で発見されるという痛ましい事故があった。
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キノコ狩りに関しては具体的な統計こそないものの、キノコを長年採っているベテラン、すなわち“キノコ狩り名人”ほど遭難しやすいと語る人もいる。実際、山で遭難した人の年齢を見ると圧倒的に高齢者が多く、昨日や今日に始めたようなアマチュアではなさそうである。いったいなぜだろうか。
筆者の友人の父はキノコ狩り歴50年の名人である。今年も山に入ってキノコを大量に採っているというが、そんな父のことが友人は常に心配なのだという。「父はどこの山に入っているのか、絶対に僕に教えてくれないのです」と、嘆く。
そう、キノコ狩りの名人ほど、キノコが生えている場所を人に教えないのである。友人、知人、近所の人に教えないという程度ならまだ理解できる。家族にまで教えない人がとにかく多いのだ。特に、マツタケやマイタケのような高価で販売される“キノコの王様”が生えている場所は、家族にも頑なに教えない。そんな人がごくごく普通にいるのである。
遭難しても発見が遅れる
キノコが生える場所を教えないということは、すなわちキノコ狩りに行く場所を教えないということだ。したがって、万が一山でアクシデントが起こった場合、家族もどこの山に入ったのか、一切わからない。当然ながら、万が一のことが起こった場合、捜索から発見まで非常に時間がかかる。これがキノコ狩りの遭難事故がなくならない根本的な原因である。
マツタケやマイタケは人家の近くや里山に生えることもあるが、キノコ狩り名人は毎年採取できる、自分だけの縄張りをもっている。その縄張りは山の奥深くにあるケースが多い。さらに、ベテランほど自分は山に慣れていると思い込み、食料もろくに持参せずに入山することが多いのである。
秋田県は日本でもトップクラスの人口減少率を誇っている一方、日本でトップクラスに熊が出没する都道府県のひとつでもある。昨年全国的に起こった熊騒動では、秋田県がたびたびニュースで報じられた。言うまでもなく、秋は熊に遭遇する可能性がもっとも高い時期であり、山に入るのはかなり危険である。これらを見てもわかるように、キノコ狩りはもともとリスクが高すぎるのである。
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