成人の8割が抱える「尿トラブル」 膣圧、男性機能の改善にも効果的な「簡単トレーニング」とは

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やらない理由を見つける方が難しい

 骨盤底筋トレーニングは動きも地味ですし、見た目の成果にも乏しいため、継続のモチベーションが湧きづらいかもしれません。でも、この運動は泌尿器科のガイドラインで「推奨グレードA」に分類されるれっきとした治療法であり、効果があることはあまたの研究でも実証されています。

 しかも、過活動膀胱だけでなく、腹圧性尿失禁や切迫性尿失禁、排尿後尿滴下といった“尿漏れ”にも有効。さらには女性の膣圧を高めたり、男性の射精力を向上させたりする効果まであるのです。それでいて、トレーニングによる弊害はほとんどありませんから、やらない理由を見つけるほうが難しい。とにかく、おすすめのトレーニングです。

ちょっとの油断で……

 骨盤底筋トレーニングが板についてきたら、今度は「膀胱訓練」も行ってみましょう。膀胱訓練とは、骨盤底筋トレーニングで鍛えた尿道括約筋を締めることで、尿意切迫感につながらないように尿意を和らげる練習のこと。まともに説明するとこんなふうに小難しくなってしまいますが、要は「おしっこ我慢体操」です。

 膀胱と尿道は協調運動をしていて、尿道括約筋が緩んで尿道におしっこが落ちると、それが電気信号になって膀胱が収縮。勢いよくおしっこが排出されます。

 もっと分かりやすく言えば、「おしっこが出そう、出そう」というときに、ちょっと油断して一滴だけチョロッと漏れると、それを呼び水に「もうダメだ」と全部出てしまうことがありますよね。これが膀胱と尿道の協調運動の最たる例です。

 膀胱訓練は、尿意を感じたときにあえて“キュッ”とおしっこを我慢して、トイレに行く時間を1分、5分、10分、と少しずつ先送りにするだけ。そうすることで、尿が十分にたまっていないのに膀胱が収縮するのを防ぎ、膀胱の容量を大きくできるのです。骨盤底筋トレーニングが基礎練習なら、膀胱訓練は実戦練習といったところでしょうか。

気軽に泌尿器科に

 ここまで、排尿日誌、摂取水分のコントロール、むくみの解消、骨盤底筋トレーニング、膀胱訓練と、さまざまなセルフケアをご紹介してきました。中には、骨盤底筋トレーニングのように方法が分かりにくいものもありますから、詳しく知りたい方は、気軽に泌尿器科で尋ねてみてください。

 泌尿器科といえば男性が行くところというイメージが依然強いかもしれませんが、最近は、女性に向けて、女性のナースが骨盤底筋トレーニングの方法を教えてくれるような病院もあります。また、良い薬もできていますから、薬物療法でうまくいくケースもある。

 一人でも多くの方が、おしっこの悩みを諦めることなく、充実した日常を送れることを願っています。

高橋 悟(たかはしさとる)
日本大学医学部泌尿器科学系主任教授。1961年生まれ。群馬大学医学部を卒業後、東京大学医学部助教授などを経て現職。悪性腫瘍から排尿障害、尿失禁まで、泌尿器に関わるあらゆる疾患を研究、診察する。天皇陛下(現上皇陛下)が入院された際の担当医師団や日本大学医学部附属板橋病院病院長も歴任。

週刊新潮 2024年10月17日号掲載

特別読物「他人には言えない 『頻尿の悩み』に効くセルフケア」より

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