成人の8割が抱える「尿トラブル」 膣圧、男性機能の改善にも効果的な「簡単トレーニング」とは

ドクター新潮 ライフ

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一筋縄でいかない「夜間多尿」

 多尿の原因はズバリ水分の取り過ぎです。夏場の熱中症対策などで余計に水分を摂取している人は、当然、尿量が増えて頻尿になります。このタイプの頻尿は水分摂取量を適正量に戻すだけで改善することが多い。

 持病のため医師の指示がある場合を除いて、一般的に飲料水による適正な水分摂取量は1日1000~1500ミリリットル。排尿日誌に水分摂取量も逐一書き込んで、取り過ぎている人は適正量に戻してみましょう。また、紅茶やコーヒーに含まれるカフェインには利尿作用があるため、そのような飲み物は避けるようにします。多尿が原因の頻尿は、これだけで症状が改善してしまうこともあります。

 一筋縄ではいかないのは、「夜間多尿」と呼ばれる、夜だけ尿量が多くなる症状です。さきほど昼の頻尿と夜の頻尿の話をしましたが、高齢者の中には「昼間はそうでもないのに夜だけ頻尿になる」という方も多い。

「就寝中のトイレの尿量」と「翌朝一番のトイレの尿量」を足したものが、1日全体の尿量の3分の1を超えるようなら夜間多尿ですから、排尿日誌をつければ夜間多尿かどうかは簡単に分かる。ただ、その原因はさまざまで、夕方以降の水分の取り過ぎだけでなく、夜中のおしっこを抑制する「抗利尿ホルモン」の加齢に伴う減少、それから、糖尿病や高血圧が原因になっていることもあります。

「ふくらはぎのむくみ」に注目

 さらに、夜間多尿の原因で近年注目されているのが「ふくらはぎのむくみ」です。日中、尿として排出されるべき水分が筋力不足などで下半身にたまって「むくみ」になり、これが就寝中に体が水平になることで膀胱に送られ、夜間の尿量が増えるというわけです。

 この場合、両足をクッションの上に置いて15分ほど横になる「足上げ寝」や、夕方のウォーキング、夕食後にふくらはぎを下から上へ向かって軽く圧迫するマッサージなどで、症状を改善することができます。

おならを我慢する感覚

 さて、続いては多尿と並ぶ頻尿のもう一つの原因である蓄尿障害、とりわけ過活動膀胱の対策についてお話ししましょう。過活動膀胱は往々にして膀胱の周囲にある「骨盤底筋群」という筋肉の緩みが原因になっていることが多い。そのため「骨盤底筋トレーニング」によって骨盤底筋を鍛え直すことが重要です。

 骨盤底筋群は、男女ともに骨盤の底にあり、膀胱や直腸、子宮などの骨盤内にある臓器を下から支える役割をしています。骨盤底筋が緩むと膀胱や尿道が正しい位置から下がってしまい、尿道をうまく閉じることができなくなるため、排尿コントロールがうまくいかなくなるのです。

 骨盤底筋トレーニングは、筋肉が動いている実感がつかみづらく、初めのうちは難しいと感じるかもしれませんが、慣れてしまえば簡単。一言で言えば、おならを我慢するときに肛門をキュッと締める“あの動き”。あるいは、おしっこをしている最中に、キュッとおしっこを止める“あの動き”。それを繰り返すのです。

 手順は、上図のような基本姿勢で、

(1)おならを我慢するように肛門を締め、そのまま女性は膣と尿道を、男性は陰茎の付け根を締めて頭側に引き上げるような感覚を10秒間キープする。

(2)さらに強い力で、1~2秒間短く締める。

 これを1セットあたり10回程度繰り返すだけ。休憩をはさみながら1日6セットほど行います。このトレーニングを2~3カ月続ければ、筋肉が太くなってきて効果が表れるはずです。

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