成人の8割が抱える「尿トラブル」 膣圧、男性機能の改善にも効果的な「簡単トレーニング」とは
まずはセルフケア
一方、いくらQOL疾患といっても、生活に支障を来すレベルの頻尿はなかなか厄介。とくに高齢者の場合、トイレを気にして外出がおっくうになり、有意義な老後はおろか、引きこもりがちになって、フレイルや寝たきりにつながってしまうことも珍しくありません。
さりとて、おしっこの悩みは他人に相談しづらいし、泌尿器科というのもなんだかハードルが高い。そんな人は、まずは2~3カ月、これから紹介する“セルフケア”を試してみてはいかがでしょうか。
セルフケアなんて気休めだと思う人もいるかもしれませんが、泌尿器科でも頻尿の1次療法は行動療法で、薬物による治療はあくまで2次療法。頻尿の治療には生活習慣の見直しやある種のトレーニングが非常に重要です。もし2~3カ月続けても症状が改善しないようであれば、前立腺肥大症や、場合によっては膀胱がんなど別の病気が隠れている可能性もありますから、そのときはお近くの泌尿器科を受診してみてください。
尿量などをつぶさに記録
セルフケアの第一歩は「排尿日誌」です。排尿日誌とは、その日のおしっこの時刻や量、水分の摂取量などを記入するもの。これによって1日の排尿回数や1回の尿量などが把握でき、尿トラブルの原因がかなり正確に分かります。
用意するのは、メモ用紙とペン、それから尿を計量するためのカップのみ。カップは500ミリリットル程度の容量がある使い古しの計量カップでもいいですし、ピクニックで使うような透明カップに50ミリリットルごとに目盛りをつけて使ってもかまいません。そうしておしっこのたびに尿をカップに取って量を計測するのです。起床直後の尿からつけ始め、就寝中もトイレに起きる人は、その際の尿量も記録しておきましょう。
また、尿漏れや尿失禁のある人は「いつ」「どのような状況で」それが起こったのかも書き留めておきます。一口に尿漏れと言っても、実はさまざまな種類があり、それが起こったタイミングや状況を記しておけば、自分の尿漏れがどのタイプかを簡単に診断できるのです。
頻尿の原因は主に二つ
例えば、物を持ったときや、咳やクシャミの瞬間、笑ったときなど、お腹に力が加わった際に起こる尿漏れなら「腹圧性尿失禁」。尿意切迫感があり、トイレに間に合わず漏れてしまうなら「切迫性尿失禁」が疑われます。切迫性尿失禁は腹圧性尿失禁と違い、漏れる量が多いのが特徴です。
それから、尿意がないのに漏れる、または尿意はあるのに出せないけれど下着にチョロチョロと尿漏れするのであれば「溢流(いつりゅう)性尿失禁」の可能性が。また、男性には、排尿後すぐにジワジワと下着の中で漏れる「排尿後尿滴下」という症状もあります。
話を頻尿に戻しましょう。
膀胱炎や膀胱がん、尿管結石などの疾患がない場合、頻尿の原因は主に尿量が多過ぎる「多尿」と、尿の容れ物である膀胱に問題がある「蓄尿障害」とに分けられます。
過活動膀胱は蓄尿障害の代表です。もし1回当たりの尿量が100~150ミリリットルしかなく、おしっこの際に尿意切迫感を覚えるならば、過活動膀胱の可能性が高い。一方、1回当たりの尿量が300~400ミリリットルあるのにトイレが近い方は多尿が疑われます。
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