「私が退避しないのは…」 日本人音楽家が爆撃されてもベイルートから脱出しない理由を告白

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 連日、イスラエルから空爆を受け続けている、レバノンの首都ベイルート。傍から見れば住むには危険過ぎるが、事情は人それぞれ。自衛隊機で退避せずとどまった日本人もいる。いったいどういうことなのか。

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 イスラエルが、パレスチナ自治区ガザを実効支配してきたイスラム組織ハマスとの戦闘を開始したのが昨年10月以降。ついに隣国レバノンは戦渦に巻き込まれた。レバノン政府は、すでに自国での死者が2000人を超えたと発表した。

「イスラエルは、ハマスと連帯するレバノンのイスラム組織ヒズボラも標的とし、本格的な攻撃に踏み切った。特に今年9月以降は攻勢をエスカレートさせ、ついに10月1日、レバノン南部に侵攻。その作戦と並行して連日、首都ベイルートなどに空爆を続けています」(国際部記者)

 日本政府は4日、レバノン在住の邦人11名を自衛隊機で緊急退避させた。しかし、現地にとどまった日本人もいる。

「私が退避しないのは……」

 その一人、レバノン国立フィルハーモニー管弦楽団のチューバ奏者、岡島征輝さん(43)はベイルートの状況をこう語る。

「普段、空爆の音は聞こえません。一度、ズドーンと低くて大きな音があり、空爆だったのですが、私が聞いたことがあるのはそれだけです。自宅から約2キロの場所に落ちたという報道もありましたが、何も認識できませんでした」

 岡島さんはドイツの音楽大学の大学院に在学中、カイロ交響楽団に入団。エジプトで17年間暮らした後、現在の楽団に請われて今年9月、ベイルートに引っ越してきたばかりだという。

「私が退避しないのは、今の仕事があるからです。辞めてしまったら途端に生活基盤がなくなってしまいます。それ以前に、日本政府が用意してくれる自衛隊機は持ち込める荷物が20キロまでなので、チューバを運べません。演奏家はチューバを最低でも2本は持っていないといけないのですが、箱を含めると1本あたり約30キロになることもあるんです」

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