「リベンジで中学受験に狂う親も…」 11月の“新年度”を前に知りたい「小学校受験」に“向いている家庭”と“向いていない家庭”

国内 社会

  • ブックマーク

“富裕層だけの世界”というイメージがもたれ、ベールに包まれていた小学校受験に、一般家庭からの参入が相次いでいる。中学受験の過熱ぶりを受けて小学校受験に臨む家庭、早くから“学歴を確保しておきたい”と考える家庭と様々だが、「とりあえず受けてみよう」で済むほど甘い世界ではないのもまた事実。小学校受験の「新年度」にあたる11月を前に、自身の子どもの受験経験だけでなく、他の受験家庭や学校、塾など多数の取材を行ってきたインフルエンサーが、その現実を明かす。(狼侍/小学校受験情報発信者)

 ***

 今年も小学校受験の本番期がやって来ました。

 首都圏の私立小学校受験は、11月1日の都内校解禁日がピークとなります。したがって、教室(いわゆる受験塾)の年度切り替えもこの11月となり、現在の年中クラスは「新年長」として最後の一年がスタートします。同様に、現在の年少は「新年中」となります。

 そもそも小学校受験とは、ひと言で言うと、「国立(都立)・私立小学校の入学試験」のことです。全国に国立(都立)小学校は68校、私立小学校は249校あります(ともに学校基本調査より)。定員数や入試倍率は様々ですが、中学受験や高校受験と異なるのは、本人の試験だけでなく、願書・面接を通じた親の試験もあることです。

 さらに、子どもの試験も学力テストだけでなく、集団での立ち振る舞いを見る行動観察や、発達の度合いを見る体操、絵画工作などの試験があります。また、こうした子どもの試験の構成が学校によって異なるのも小学校受験の特色です。たとえば有名校の一つ、慶應義塾幼稚舎では学力テストは課されず、強度の高い体操、行動観察の意味合いが強い絵画工作が中心の試験となっています。

 そのような小学校受験は、就職活動に似ていると考えれば分かりやすいです。就職活動が、SPIなどの能力面もさることながら、エントリーシートと面接による「相性」が採否を分けるように、小学校受験も、子どもの能力だけでなく、親子それぞれを含めた「相性」の選考となります。

 したがって、就職活動と同様に「偏差値」という概念がありません。早慶附属(系属)小学校のような有名校は倍率も高いですが、それは人気度を示すものであり、決して合格する子どもの能力の差を示すものではないのです。

狭き門ゆえの高倍率

 さて、そのような特徴に私立小学校の難点も隠されています。それは、選択肢の少なさです。

 東京都内で私立中学校は187校あるのに対して、私立小学校はわずか55校(ともに学校基本調査より)。そこには中高の併設がないところもありますから、いわゆるエスカレーターで高校や大学まで進学できる小学校は50校弱に絞られます。さらに、そのうち併設中学の受験偏差値(四谷大塚調べ)が、一つの目安であろう60を超える学校は9校ほど。小学校受験そのものに偏差値はありませんが、併設中学の受験偏差値を物差しとした場合、教育熱心な高学歴層の親が満足する偏差値帯の学校は極めて少なく、出願倍率も5~10倍近くになるのが実情です。

 では、昨今人気の私立小学校は一体何が魅力なのか。

 よく耳にするフレーズが「中学受験回避」でしょう。中学受験生は小学校高学年ともなると、塾通いと勉強漬けの日々。負荷は様々ですが、概ね夏休みもない過酷な日々が続きます。それはやりすぎだろうと考えた親御さんがたどり着いた先が、私立中学に内部進学ができる附属小学校という選択肢です。習い事やスポーツ、英語学習など、受験勉強に縛られない、いわゆる小学生らしい時間を過ごすことができます。

 しかし、この場合注意すべきは、中学受験の偏差値表を忘れることです。そこへのこだわりが残ったままだと、少ない選択肢しか目に入らず、発達に見合わない過酷な負荷を幼児に与えたり、結果として小学校受験で合格できず、リベンジに狂ったような中学受験を強いたりする可能性が高くなります。

次ページ:偏差値を求めるなら……

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。