テレビはいつも「台本通りの展開」で「見えない力が働いている」のか? 実際に出演して分かったホントのところ

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あくまで参考に

 テレビ番組について、ネットではよく「台本に従って言わされている」「この論調に予定調和で持って行こうとしている」「これは台本通りで、何か見えない力が働いている」などと書かれる。だが、実際の収録現場を訪れるとこれは荒唐無稽な陰謀論というか、むしろ、テレビ業界を過大評価しているように感じられるのだ。

 断言するが、テレビの制作現場に「見えない力」やら「政府の圧力」が影響を与えることなど滅多にない。無論、報道番組では「ウクライナが被害者であるという観点から報道するように」などとプロデューサーが考え、番組がその方針で作られることもあるだろう。

 だが、少なくともバラエティ番組や情報番組で、組織の人間ではない出演者をも会社上層部や政府がコントロールをするのは、非現実的である。そもそも番組制作の主役は外部の制作会社。テレビ局の上層部はおろか、政府と繋がっているなど考えにくいのだ。

 もちろん、後に「あそこまで番組の意図と違うことを言う彼を外せ」などと上層部から言われることはあるだろう。が、少なくとも外部の出演者は、事前に渡される台本を忠実に辿って発言するということはあまりないのではなかろうか。実際私が出演した数々の番組でも、台本についてはプロデューサーもディレクターも番組MCも「あくまでも参考にしてくださいね。基本的に自由に意見を言ってください」ということがほとんどだ。

事前に把握するため

「だったらなぜ台本が存在するのか」とお思いの読者もおられよう。レギュラーコメンテーターにはもちろんのこと、単発の出演でも、出演オファーが来たタイミングで、テーマは伝えられる。そして、肝心の台本は、収録の2日前~前日に送られてくる。

 台本を読むと、MCが「石破内閣発足から直後の衆議院選挙の展望について、山田さんの意見はいかがでしょうか?」などと発言すると書かれてある。それに対する「山田」氏の答えは台本上「適宜答える」ぐらいしか指示されていない。

 もし書かれていたとしても、「内閣発足以来史上最速で解散総選挙が行われることへの意見」程度であり、「賛」や「否」を制作側から押し付けられることはない。いや、少なくとも私は一度も論調を強要されたことはない。せいぜい、「あなたの思想は分かっていますが、テーマからズレないように留意願います。演説はやめてください」ぐらいのものだ。

 だったら、台本の役割は一体なにか――。実は台本は、演者よりも進行役にとって重要な役割を果たしている。進行役は、番組構成を把握し、どのようなVTRやフリップが出てくるかを理解したうえで、出演者に意見を求めなければならない。そのために台本が必要なのだ。そしてコメントを求められる出演者も番組の進行を理解するため、事前に目を通しておくのだ。台本の役割は、それ以上でもそれ以下でもない。

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