「おむすび」が批判される理由は「明る過ぎるヒロインアレルギー」 まるで90年代少女マンガのような橋本環奈に違和感
旧来のドラマヒロインはうざい女? 「明るく元気で前向きヒロイン」への視線の変化
朝ドラは明るく爽やかであるべし。ヒロインも明るいに越したことはない。でも明る過ぎる女性はウザい。それが最近のコンセプトではないだろうか。
「おむすび」と並んで酷評された朝ドラに、「ちむどんどん」や「半分、青い。」があるが、その二つの共通点はオリジナルの現代劇ということと、直情型ヒロインということではないか。天真らんまんといえば聞こえはいいが、行き当たりばったりで周囲を振り回す主人公。恋愛の機微に鈍感なのに、イケメンの心をするっと手に入れてしまう。
何かに似ているなと思ったら、90年代までのマンガでありがちな、「強気な美少女ヒロイン」造形だ。勝気でいらんことにも首を突っ込み、たいてい足手まといになる。憎からず思っている男性に、照れ隠しや嫉妬で暴力を振るうこともある。それでも愛されるヒロイン。
でも今や、空気を読めない人間は嫌われる。暴力を振るうなんてもってのほかだ。尾崎豊さんの「盗んだバイク」「窓ガラス壊してまわった」の歌詞にドン引きする世代は、Adoさんの「うっせえわ」のように冷ややかに心の中で相手を見下すことを選ぶだろう。
そうした流れをくんだ朝ドラが、「ひよっこ」や「おかえりモネ」といった、おとなしくて鬱屈(うっくつ)を胸に秘めるヒロインの誕生につながったのではないか。ただ一方で、「朝ドラにしては暗い」という不満も呼んだ。
明る過ぎるヒロインアレルギーと、朝ドラは明るくあるべき、という使命。「おむすび」は、さまざまな過去作の反省会を経て、落としどころに「ギャル」を選んだのではないかと想像する。橋本さん演じる結は、まだギャルには染まっていない。けれどもギャルマインドには親しみ始めている。生まれつきうざいほど明るい性格なのではなく、明るくポジティブなギャルに成長したんです、というエクスキューズが用意されているように見える。
直情的で見た目は怖いが、根は実直で友達思いの集団。「おむすび」でのギャルは、90年代のマンガが描いてきた、「ヤンキーヒーロー」や「暴力系美少女ヒロイン」と重なる。やっぱりどこまでいっても、マンガチックであることは否めない。というか、明る過ぎるヒロインアレルギー対策と明るく爽やかな朝ドラを両立すること自体が、リアリティーとは無縁の、マンガのようなファンタジーにしかならない、ということを示しているのかもしれない。
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