子どもにイライラしてしまうお母さんはどうしたらいい? 「ぐりとぐら」生みの親・中川李枝子さんがお母さんたちに直接語りかけたこと

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 89歳で死去した作家の中川李枝子さんは、累計発行部数2000万部を超える「ぐりとぐら」シリーズをはじめ、子どもに向けたさまざまな作品で知られる。同時に、中川さんには「お母さんたちの悩みに応えたい」と刊行した本、『子どもはみんな問題児。』もある。

 発売1カ月で4万5000部を超え、評判を呼んだ刊行当時(2015年4月)、中川李枝子さんが登壇するトークショーが東京都内で開催された。

「いいお母さんって、どんなお母さん?」と題したイベントには、参加者からたくさんの質問が寄せられた。そこで中川さんが口にした、温かい「答え」とは。

 今回、哀悼の気持ちを込めて、当時紹介したトークショー会場の模様を改めてお届けする。

(デイリー新潮 2015年04月28日配信の記事をもとに加筆・修正しました。)

子どもに対してイライラしてしまう

 忙しい時間に子どものイヤイヤが始まると、余裕がなくなりイライラして、子どもに怒ってしまう。理不尽に怒鳴ってしまう。その後で後悔の気持ちでいっぱいになるというのは、お母さんなら誰もが一度は経験したことのある悩みだろう。どうやったらそれを解消できるか、という相談に、中川さんは自身が保育士だったころに担当した、ある男の子のエピソードを語った。

 その子は元気な男の子だったが、ある日「吃音」が始まってしまったという。はきはきした性格で仕事もしている母親にそのことを伝えると、その母親は原因に身に覚えがあるという。忙しい日々の中で子どもを急かすことが普通になっていた。そのため子どもは緊張して言いたいことが溢れ、「どもり」になってしまったという。それから母親と中川さんは相談して、その子を急かさず、なるべくゆっくりと接することを心がけた。すると男の子は元の活発さを取り戻した。

 どうしても子どもにガミガミ言いたくなってしまう、というお母さんたちに、中川さんは、一緒に本を読みましょうと提案。お母さんは子どもを目の前にすると、どうしても何か言いたくなるもの。同じ言葉を使うなら、叱るためでなく本に使えば、子どもも楽しいしお母さんの愛情も伝わる。そうやってエネルギーを良いほうへ使ったらいいのよ、と優しく伝えた。

 また、17年間保育士を務め、作家として子どもに携わってきた経験から、子育てにはそのときどきの流行があるとも。「叱らない」「とにかく褒める」など最近はやっている育て方ができないからと、自分を責める必要はありませんよ、と母親たちに語りかけた。優れた児童文学を読み、理想の母親像は自分で見つけましょう、とアドバイスしたうえで、自宅から持ってきた『小さい牛追い』『あらしの前』(ともに岩波少年文庫)を薦めた。中川さん自身、『小さい牛追い』に登場する4人の子どものお母さんに深く学んできたという。

子どもの声は騒音か?

 昨今議論になっている「子どもの声は騒音か?」という問題についても中川さんは語った。「保育園が『騒音問題』として扱われるニュースを見て、日本人はここまで変わってしまったかと悲しい思いです」という読者(80代、女性)の手紙を紹介し、話し合うことが大切だと語った。子どもの顔を見て、声の主が分かるとお互いの事情を思いやれるようになる、とコミュニケーションの大切さを語った。

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