不眠不休で帰ってきても、足を延ばせる風呂がない…令和の若者がそっぽを向く自衛隊官舎“老朽化” 「石破総理」も認識、しかし建て替えが進まない理由

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緊急参集要員住宅

「古い部屋に住みたくないなら、自分で家賃をだして好きな家に住めばいいじゃないか?」という意見が出るかもしれないが、この隊員は「緊急参集要員」に指定されており命令で、この「緊急参集要員住宅」に居住させられている。ここに居住する義務があるから仕方なく住んでいるのだ。彼の家族は別の一般的なクオリティの賃貸住宅に住み、彼は家賃を支払っている。でも、この家族の家に居住することは命令違反になるのだ。

 緊急参集要員とは何か? 重要な職務に携わる自衛隊員の中にはその拠点から2キロメートル以内の無料官舎に居住し、有事や災害等の緊急時に直ちに帰隊しなければならない義務を課せられた隊員のことをさす。

 パイロットや搭乗員、艦長や機関長などの重要な乗組員、指揮官等の幹部自衛官等が緊急参集要員となる。法令で交通インフラや通信手段が遮断されても、迅速に職域に登庁する義務がある。家族の家で一緒に食事をするたびに、このような緊急参集要員住宅に帰宅しなければならないのが嫌でしかたないという。緊急参集要員住宅には新築の住宅も多いが、この例の無償供与住宅は、もともと賃料が取れるようなクオリティではない。

自衛隊官舎に開いた穴

 次は関東のある自衛隊官舎の例だ。

 自衛隊は異動時に換気扇をもって移動しなければならないという慣習をご存じだろうか? 写真(3)の配管の上に四角いフタのようなものがある。これは入居者が入居後に自腹工事で蓋を取り付けた。ここは隊員が持ち込んだ換気扇が入る穴だった。マイ換気扇を設置しない場合は、換気扇を取り付けるためのこの穴を入居者がふさがないと、虫がはいってくる。最初はガムテープと段ボールで止めていたが、板でふさいだ。これもまた、官舎からの退去時に再び、修理し元の穴あき状態に戻さないといけない。

 ガスコンロも入居後に新しく買った。マイ換気扇・マイガスコンロを入居者がもってきて、退去時に取り外す。持ってこない隊員は新たに買うか、このように工夫することになる。

 この隊員はクーラーを使用するために、100Vから200Vへ電気工事をする必要があった。これも退去時にまた現状復帰のため工事費が発生する。入居する隊員に入居時と退去時に工事負担が発生する。

 写真(4)の天井の照明に繋がる見慣れない配線がわかるだろうか? これをたどるとコンセントにいきつく(写真〈5〉)。コンセントから照明用電源を取っているのだ。もともと、傘なしの電球のソケットしかなかったところに、蛍光灯の照明をつけようと配線を付け替えたようだ。傘なし電球のソケットが今も釣り下がっているよりはマシだが、謎の配線をしなくても蛍光灯が付けられる住宅を整備できないものだろうか。

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