“2年連続最下位”からの明暗…「立浪監督」と「新庄監督」は何が違ったか 立浪政権は「試行錯誤しているうちに終わってしまった」

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見極めが大事

 ともに就任から2年連続で最下位――しかし、若手中心の新しいチームで、クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージを突破した北海道日本ハムファイターズ・新庄剛志監督(52)と、今季で退任が決まった中日ドラゴンズ・立浪和義監督(55)の違いはどこにあったのか。

 両監督の足跡を追うと、3年目となった今季までに歩んだ道程は大きく異なる。チームの再建、世代交代をどうするか。指揮官のセンスが問われる場面で二人はどう対応したのだろうか。

 新庄監督はレギュラーシーズン全日程を終えた10月8日、自身の去就に言及している。

「今後の戦い方次第。完全燃焼したら、もう責任を果たしましたってなるかもしれないし、(悔しくて)くぅーってなって、やり返したろと思ったら、(来年も)またあるし。それはもう、戦い方次第ですね」

 就任3年目の今季、新庄監督は最下位からの脱出に成功しただけではなく、リーグ2位に躍進、チームとしては6年ぶりとなるCS進出も果たした。今季は75勝60敗8分け。今季限りで退任する可能性も匂わせたが、チーム再建と世代交代を押し進めた功績は誰もが認めるところだ。

「清宮幸太郎(25)、万波中正(24)、松本剛(31)の成長が大きい。捕手の郡司裕也(26)がサードで頭角を現し、田宮裕涼(24)、現役ドラフトで移籍してきた水谷瞬(23)も自信を持ってプレーしています。新加入のレイエス(29)もずっと以前からチームにいたかのように馴染んでいます」(地元メディア関係者)

 ひと言で言えば「若手の成長」だが、試合で使うのは簡単なことではない。まずは、経験を積ませなければならないし、すぐに結果を出せない若手も多い。ある程度は我慢して打席に立たせるか投げさせるが、そこから先、ベンチに下げてまた一から練習させるか、さらに我慢して使い続けるか、その見極めが重要となってくる。ここで道を誤ると、チームの再建は遅れる。その見極めができたのが新庄監督であって、できかったのが立浪監督だ。

うまく回らなかった立浪采配

「中日の今季の敗因は、中田翔(35)の故障と後半戦の不振が大きかったと思います。立浪監督は中田と心中するくらいの覚悟でいましたが、その通りになってしまいました」(名古屋在住記者)

 さらに、過去2年の敗因は別のところにあるようだ。就任一年目のシーズン終盤、立浪監督はチーム強化策を聞かれ、こう言った。

「できないなら人を変えるしかない。今のままのメンバーで優勝できない。時間はかかるかもしれないけど、思い切って変えていくしかない」

 選手の大幅な入れ替えである。事実、立浪監督は二遊間のレギュラーだった京田陽太(30=現横浜)、阿部寿樹(34=現楽天)のトレードを強行し、ドラフトで村松開人(23)、田中幹也(23)、福永裕基(28)ら内野手を複数指名した。計算の立つ中堅選手ではなく、これからの若手選手の伸びしろに賭けたわけだが、翌23年ドラフト会議でも社会人野球で活躍していた津田啓史(21)も指名し、二遊間を守れる内野手を“重複”させた。

「立浪監督は、かつての星野仙一、落合博満両監督のように、補強などのチーム編成に関する全権を委ねられた指揮官でした」(前出・同)

「選手の獲得」には労を惜しまなかった。ペナントレース中でも時間を割いて大学野球のリーグ戦も視察し、オフにはドミニカ共和国で開催されるウィンターリーグにも足を運んだ。メジャー通算41本塁打を放ったアキーノ(30=現メキシコリーグ)、カリステ(32)を見出し、23年オフに契約したディカーソン(34)にしても何度も映像を見て、獲得にゴーサインを出した。外国人選手は“ハズレ”も多かったが、現役ドラフトで細川成也(26)を獲得しており、選手の素質を見極める眼力はたしかだった。

「立浪監督の下でレギュラーに定着したのは、岡林勇希(22)、細川。福永たちも一軍戦力ですが、村松、田中、カリステらとポジションが重複しています。みんな二遊間を守る内野手です。さらにまた津田を獲ったため、彼らの出場機会が限られ、経験を積ませる機会が少なくなってしまいました。出場機会も限られてくるので、レギュラーが決まるまで時間が掛かりそう」(前出・同)

「できなければ入れ替える」という厳しい姿勢もプロの世界では必要だが、「若手に経験を積ませて育てる」点で、こんな指摘も聞かれた。育てる優先順位を見誤ったのではないか、というものだ。最初に着手すべきは「打線の中核」となる4番候補であり、それが石川昂弥(23)だった。

「怪我もあり、立浪監督が使いたくても使えなかった時期もありました。石川が守れるポジションはファーストか、サード。サードには高橋周平(30)がいて、ファーストに中田を補強した時点で石川の出番は限られてしまいました。今季後半、中田がファーム再調整となって、ようやく石川が一塁のスタメンで出場できるようになりました」(前出・同)

 その一塁にしても、立浪監督は石川ではなく、カリステを起用する日があった。東京ヤクルトとの僅差での最下位争いが続き、この「負けられない試合」が若手よりも実績重視の起用、あるいは「調子を落としている選手を他の若手に代えて」という采配になった。

「立浪監督に『我慢しても使いたいと思わせる選手』が少なかったとも言えます。今季に限っては怪我で出遅れた岡林をシーズン中盤から使い続け、後半に結果が出始めました。若手の成長には時間が掛かるもの。中日の打線低迷は立浪監督が就任する前からのチーム課題でした。試行錯誤しているうちに終わってしまった印象です」(球団関係者)

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