日本人も危ない…「香港」で犯罪「3割増」の衝撃 当局が疑う「中国」黒社会の関与 治安状況も急速に“大陸化”か

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旅客機内の盗難も急増、8,000万円の最高級時計が被害に

 香港の犯罪増加で、日本人にとって気がかりなのは、香港到着便の旅客機内での盗難で、今年1~8月の8カ月間で前年同期比164%増の132件と急増していることだ。最高被害額は416万香港ドル(約8,000万円)だった。スイスからの旅行者が座席の上の共用荷物棚に置いておいた荷物の中の最高級時計を盗まれた。

 この盗難事件では、時計の持ち主が紛失を確認したのが遅く、犯人は捕まっていない。184件の事件のうち、犯人が逮捕されたケースは1件しかないが、中国人4人とトルコ人1人のグループだった。この事件は8月25日にベトナム・ダナンから香港までの便、キャセイパシフィック航空の格安航空会社である香港エクスプレス運航のフライトで発生。同じ便に乗っていた旅客が犯行の現場を目撃しており、33万香港ドル(約634万円)相当のロレックスの時計と数1,000香港ドルの現金を盗んだ一味たちが逮捕されている。

 機内での盗難事件については、ほとんど例外なくエコノミークラスで発生しおり、ビジネスクラスまたはファーストクラスでの盗難被害の報告はない。後者の場合、旅客数が少なく、旅客の行動について、アテンダントの注意が行き届いているためとみられる。また、機内には監視カメラは設置されておらず、目撃者がいる場合はさておき、犯行グループを特定するのが難しいのは確かだ。

警察は不法就労中国人の拠点をがさ入れ

 香港政府移民局特別機動部隊はこれらの旅客機の盗難事件や前述の詐欺事件などが多発していることから、中国大陸からの大規模な犯罪グループが香港内で犯行を重ねている可能性があるとみて、今月7~9日の3日間で、4回に分けて合計で約100カ所の不法就労中国人の拠点を家宅捜索。不法就労組織の首謀者や不法就労者ら計19人を逮捕した。これほどの大規模な家宅捜索は初めてで、香港当局は、このようなグループの背後には大規模は中国の黒社会組織が介在しているとも見方を強めている。

 香港の外交筋によると、同部隊は一味の拠点の中から多数のパソコンを押収した。そこには名簿類が入っていたことから、大陸からの不法労働者の名前とみて、犯罪組織の全容解明を急いでいる。

 しかし、香港の場合、1997年7月の中国返還前の英国領時代ならばいざ知らず、いまや中国の一地方自治体に過ぎず、トップの李家超(ジョン・リー)行政長官はじめ、官僚組織は北京の意向に逆らえず、中国政府に何らかの遠慮があるのとの見方が強い。それだけに、中国の犯罪組織とはいえ、摘発によって中国政府がどのような反応を示すのかを慎重に見極めたいとの思いが強いとも考えられ、中国人犯罪組織の大規模な摘発作戦に発展するかどうかは未知数である。その一方で、当局が民主化運動への弾圧を強めているのは皮肉な出来事だ。

 さまざまな場面で中国化が進む香港だが、治安状況も中国本土に倣うように、悪化の一途を辿っているようである。

相馬勝(そうま・まさる)
1956年生まれ。東京外国語大学中国語科卒。産経新聞社に入社後は主に外信部で中国報道に携わり、香港支局長も務めた。2010年に退社し、フリーのジャーナリストに。著書に『習近平の「反日」作戦』『中国共産党に消された人々』(第8回小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞)など。

デイリー新潮編集部

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