石破首相には「できれば何もしないでほしい」…トルコ出身の気鋭エコノミストが分析「新政権下で日本経済はどうなる?」

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円高でも株価は上がる

 今は首相も日銀も慎重な姿勢を見せてはいますが、長期的には、利上げによって金融政策の正常化を図っていくことになるでしょう。先ほど申し上げた通り、それが今回の総裁選の結果が表していたことですから。

 行き過ぎた円安によって悪影響が広がっている今の日本にとっては、円高に振れていくのが適正な方向です。たしかに7月、日銀が利上げに転じた直後は、株価も大きく下落しましたが、結局はまた上がってきていますよね。為替と株価には、多少の相関関係はあったとしても、完全に連動しているわけではない。円高基調な状況下でも、株価は上がっていくんです。

 むしろ、これ以上円安が進んでいく方が、既に日本株を持っている海外投資家からすると印象は悪い。結局価値が減り続けていくということなら、もう買いたいとは思わないでしょう。

 先日には、セブン&アイ・ホールディングスに対するカナダ企業からの買収提案がありましたが、通貨安が進むと、こうした買収も現実のものになりかねないわけです。日本の産業を守る意味でも、金利ある世界へと変わっていくときなんだと思っています。

給付金がもたらす不利益

 石破首相の政策に注文をつけるとしたら、「行き過ぎた所得の再分配はいけない」ということです。岸田政権時代も頻発していたことですが、石破首相も早速、低所得者層への給付金支給への意欲を示していました。

 こうした政策は一見良いことのように受け止められますが、極端に言うと、納税者から集めたお金を、納税していない人にばら撒いているということですよね。働けば働くほど負担が増えるということであれば、若い人たちの野心を削りますし、優秀な人ほど日本からどんどん逃げていきますよ。こうして競争がなくなっていくと、イノベーションが著しく妨げられてしまう。

 たしかに給付金は、一時的な支持率にはつながるかもしれない。だけど、日本からイノベーションが起こらなくなったら、それこそ国益を大きく棄損することになります。そもそも、国民がインフレで困っているときにお金をばらまいてしまえば、結局はお金の価値を目減りさせて、さらなるインフレで国民を苦しめるリスクさえあります。目先の支持率に惹かれて、長期的な不利益を忘れてはいけないのです。

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