大工場で1000人がスト、26歳女性が2入社4カ月で過労死…アジア実力調査で日本超え「インド」の“ブラック労働現場”で起きていること

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日本を抜いて3位に

 世界最大の人口を擁するインドの国際社会におけるプレゼンスは高まる一方だ。

 豪州のシンクタンク、ローウィー研究所が9月22日に発表した実力調査「アジアパワーインデックス」2024年度版で、インドが初めて日本を抜き3位となった。この調査はアジア太平洋の27の国と地域の「経済力」「軍事力」「外交的影響力」など8つの分野を分析し、総合的な国力を評価している。首位は米国、2位は中国だ。

 日本の総合力のポイントは前回より増加したが、購買力を含む「経済力」や人口増に起因する「将来に向けた資産」などが大きく上昇したインドに後塵を拝した形だ。

 インドの最近の購買力には目を見張るものがある。インド自動車工業会が10月14日に発表した今年4~9月の乗用車販売台数(出荷ベース)は、前年比1%増の208万1143台と過去最高を更新した。中間層の旺盛な消費が成長の原動力だと言われている。

 インドでは豪華な結婚式はけっして珍しくないが、中間層の拡大によりこの傾向がさらに強まることが見込まれている(8月18日付CNN)。株式市場もこのところ右肩上がりで成長を続けていることから、日本の投資家の間でもブームが起きている。

 だが「第2の中国」として世界経済を牽引する役割が期待される一方、「雇用創出力の低さ」という深刻なアキレス腱は一向に改善されていない。

サムスンの労使対立は深刻な状況

 米シティグループは7月、インドは現在の成長率(年率7%)だと年間の雇用創出が800~900万人にとどまるが、国内労働市場に新規参入する若年層を吸収するには年間1200万人の雇用創出が必要との分析結果を示した。

 この事態を改善するため、ナレンドラ・モディ首相は「メイク・イン・インディア」政策を掲げ、海外からの直接投資を奨励している。だが、この努力が台無しになりかねない事案が発生した。

 9月9日、インド南部タミルナド州にあるサムスン電子の家電工場で従業員約1000人が賃上げなどを求めてストライキを開始した。対して、サムスン側は「地域平均の2倍近い賃金を支払っている」とした上で、ストの違法性を主張している。

 10月に入りサムスンは和解案を提示したが、従業員側がこれを拒否し、ストは2カ月目に突入した。インドにおけるサムスンの年間売上高120億ドル(約1兆7500億円)のうち、同工場は2割弱を担う。そのため、ストが長期化するにつれて業績への悪影響は避けられなくなっている。

 日本貿易振興機構(ジェトロ)が現地日系企業を対象に昨年実施した調査によれば、インドにおける投資環境上のリスクとして、税制や行政手続きの複雑さに続いて「人件費の高騰」が3位となっている。

 サムスンの労使対立が長引けば、「中国に代わる投資先」との期待がしぼみ、海外からの投資に急ブレーキがかかってしまう可能性は排除できないだろう。

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