付き合っていないのに同居スタート!? “ウィンウィン”の関係から始まった二人が夫婦になるまで
人生いろいろ、家族もいろいろ、幸福の形もいろいろ。近年、「結婚がゴールではない」という声も大きくなりつつあるとはいえ、ゴールインした二人には幸せになってほしいと思うのが人情というものだろう。
そして、そのゴールに到達するまでには、十人十色のドラマがあるのは言うまでもない。目下、幸せに包まれているカップルにエールを送りつつ、出会いから現在までを根掘り葉掘り聞いてみる「令和の結婚事情レポート」。
今回登場していただくのは、バリトン歌手・宮下嘉彦さん(27)とソプラノ歌手の高橋梢さん(31)。
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きっかけは“隣同士の席”
交際はナンと同居から始まったという。オペラや声楽の公演や研究活動を行う「東京二期会」の宮下嘉彦さんと高橋梢さんの物語の開幕だ。
2019年4月、二人は第一線の舞台に立つプロのオペラ歌手を養成する「二期会オペラ研修所」のクラスの仲間として出会った。
初日のオリエンテーションでは席が隣同士に。大学を卒業して26歳になっていた梢さんは、嘉彦さんを見て「すっごく若い子がいるんだな」。嘉彦さんの彼女への印象は「え? 訛ってるな」。愛媛県出身、大学から7年を広島県で過ごした梢さんは標準語を喋っていたつもりが、ついイントネーションに出ていたのだ。
生徒の声を教師らが見定める「試聴会」ではペアとなり、モーツァルト作曲の「フィガロの結婚」で伯爵夫人のメイドと、そのメイドを誘惑する伯爵を演じた。
梢さんは「すごい人。こんなところで勉強できるなんて楽しみ」。嘉彦さんは「(梢さんは)変な癖もなくまだ型にハマっていないストレートな歌い方だな」と、双方好感を抱いた。
共にする時間が長くなるほど「気が合うな」と感じた二人。師匠同士が兄弟弟子にあたることも分かり、音楽や歌に対する考え方が同じなのも納得した。
「一緒に住んじゃえば……」
研修所2年目からコロナ禍に。額を突き合わせての練習ができなくなり、近しい距離感はどの演目を誰と組もうと感じることはなくなった。「やはり一番近い関係」と互いに認識。その奥には好意もあった。
コロナ禍のため嘉彦さんは、母校・昭和音大の練習室を借りられなくなった。梢さんは防音の練習室付きアパートに住んでいたが、部屋が手狭で引っ越したいと考え、電話で「間取りとか(不動産屋で)探してるんだよね」と伝えた。その言葉に嘉彦さんはこう答えた。
「僕は練習する場所が欲しいし、あなたは広い部屋が欲しい。一緒に住んじゃえば解決するんじゃない?」
「そうだよね!」と梢さん。二人で見つけた木造一軒家の借家で、21年7月から同居をスタートさせる。
ここまでは好意こそあれ、交際の打診は皆無。梢さんには「男性とお付き合いしたくない時期があった」そうで、そのことを嘉彦さんも知っていたからだが、同居開始で「付き合ってるって周りに言ってもいいんだよね」。これが晴れての交際申し込みとなった。
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