なぜか衆院選の争点にならない「物価高」 減税や給付ではなにも解決しない

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物価高の原因を放置した弥縫策

 現在、多くの消費者が、将来にわたり物価上昇が続くという懸念をいだいている。先述の日銀による9月の生活意識アンケートでも、1年後に物価が「上がる」と答えた人は、前回調査よりは減ったものの、85.6%という高い割合を占めた。このように消費者に物価高への懸念があるかぎり、個人消費が伸びる可能性は低い。

 それなのに、たとえば電気やガス、ガソリンなどへの補助金を継続したところで、一時しのぎの救済策にはなっても、個人消費の伸びにはつながらないだろう。いまの物価高をもたらしている大本にメスを入れないかぎり、なにを講じても弥縫策にしかならない。

 それでは、物価高の原因はなにか。それは円安によって輸入物価が上がったことに尽きる。日本の食料自給率は38%にすぎない。平均102%というG7諸国のなかで、日本は群を抜いて低い。そのうえ一次エネルギーの9割を輸入に頼っている。これだけ輸入に頼らざるをえないかぎり、給付を増やそうと、減税しようと、為替レートが円安のままでは物価は下がらず、いたちごっこが続くだけなのだ。

 次に、円安の原因だが、それは日本と欧米とのあいだの金利差にある。日本ではアベノミクスの「第1の矢」とされた「金融緩和」が長く続けられた。当初は世界の主要国の金利も低く、大きな金利は生じなかったが、2022年から各国の中央銀行は、ポスト・コロナのインフレに対応するために短期金利を急速に引き上げた。しかし、日本だけはその流れを完全に無視して「金融緩和」を続けたので、金利差が一気に広がったのである。

 日銀が早い時期に緩和政策を撤回し、金利の上昇を認めていれば、いまの物価高騰も、それを原因とする実質賃金の低下も、かなり食い止めることができただろう。それができなかったのは、アベノミクスの「第2の矢」であった「財政出動」とも関係がある。日本は金利がゼロなのをいいことに、野放図に国債を発行し、それを日銀が購入してきた。利上げすれば国債の償還費が上昇し、日銀の収支が悪化してしまう。

 このため、日銀は(政府も)思い切った手を打てなくなっているのだが、物価高対策とはつまるところ、日銀が金融の正常化を進め、金利を上げることでしかない。

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