脅されて不倫を続けた挙句、800万円を支払うハメに… 転落した41歳男性の “最後の希望”は

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唯一の生きがい

 ようやく支援団体とつながり、自己破産の申請をした。今はシェアハウスに住みながら非正規で仕事をしている。手取りは15万もない。そこから妻に5万円仕送りをしている。

「子どもは女の子だったようですが、写真も送ってもらえない。認知したいけど鞠絵は拒否しています」

 一方で玖美さんはその後もときどき連絡してくる。ブロックしてしまえばいいのに、あまりの孤独感がそうさせてくれないと彼は言った。

「返事はしていませんが、誰かが僕の存在を知ってくれているだけで気持ちが安らぐこともあるんです」

 どこまで転がり落ちればいいのかと、客観的に自嘲していた時期もある。生きている意味がないとビルの屋上から下を眺めたこともある。だが、つい先日、鞠絵さんが3歳になった娘の写真を初めて送ってくれた。彼は一瞬、写真を見せてくれようとしたが、「すみません。やっぱり僕だけの楽しみにしておきたい」と言った。もちろん。もったいないから、他人には見せないほうがいいですよと私も言った。

「この写真を見ると、少し生きる気力がわいて来るんです」

 そして彼は小さな声でつけ加えた。

「昔、物置みたいなところで暮らしている母親のことを、努力が足りないからこんな生活になったんだと思ったことがあったんです。でも思いがけないことが続いて、がんばってもどうにもならない人生もあるんだと実感した。自分が甘かったのはもちろんだけど、なんというのか……ここまでどん底に堕ちるとは思いませんでした」

 それでも彼の誠意は、元妻に少しずつ伝わっているのかもしれない。いつか娘に会いたいといった、彼のくぐもった声がいつまでも耳に残った。

 ***

【前編】ではすべての悲劇の発端となったともいえる「お金」の問題を、詳しく紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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